「いなちゃんによろしく」

北朝鮮によって拉致されたとみられている17番目の政府認定被害者松本京子さんの新情報がつたえられている。

朝日新聞によれば、つぎのいきさつでこの新情報は入手できたということである。

1.北朝鮮による拉致を調査している特定失踪者問題調査会が情報を入手した。

2.中朝貿易をしている中国人男性から、調査会に、「松本さんとみられる女性が北朝鮮

  貿易会社にいる」という情報が寄せられた。

3.調査会は「松本さん本人であることを示す証拠を入手してほしい」と依頼した。

  その女性の写真の入手などを依頼したもようである。

4.10月の中旬に、中国人男性は、その女性からある伝言を託されてきた。

  それが、この短いひとことである。

いなちゃんによろしく

中国人男性が写真などの証拠を入手できたのかどうか、現段階では明らかにされていない。

これまで北朝鮮内にいる拉致被害者についての情報はほとんど外部に出てきていないことから、

これはなんらかの北側の意図的な情報工作であることもありうる、と慎重に検討されているもよう。


しかし、この情報が表にでたからには、貿易会社の中国人による情報ルートは、これで断たれる

ことになる。

松本京子さんらしき女性も、働いていた貿易会社から、どこかへ姿を消すことになってしまうだろう。

彼女はまわりから、つねに監視の目が注がれた環境のなかで生きているだろうから、

日本に伝えたい30数年間の山をなす思いがあっただろうに。

両親へつたえたい言葉は米子の海岸の砂の数ほどあったろうに。

自分が何者であるか、それを伝えるために、可能な限り短い言葉しか渡せなかった。

万感の思いが込められた、その「伝言」とは、

「いなちゃんによろしく」

なんという、痛ましさだろう。

わくわく亭は、これを書きながら…