九九の起源

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わくわく亭はもとより文科系ですから、数学の本は苦手でよみません。しかし数学者の、しかも天才数学者について書かれたものは、結構好きで読みます。

この『天才の栄光と挫折』の作者藤原正彦さんは、あのベストセラー『国家の格』の作者であり、本業は
数学者です。
内外9人の天才数学者の略伝を、その生誕の地を訪ねながら、エッセイ風に書かれた、とても読みやすく
情感もほどよく吐露した好著です。

解説が『博士の愛した数式』以来数学づいている小川洋子さんである。

彼女の解説の一節を読むだけも、すれぞれがいかにドラマティックでロマンティックな物語になっているか分かろうというもの。

「9人の天才たちの生涯を追ってゆくと、数学がいかに深く、美と結びついた学問であるかがよく分かる。(略)
9人の天才たちが確立した美に物語があるのと等しく、それぞれの人生で味わった挫折にもまた、物語が
ある。ある者は病に倒れ、ある者は恋に破れ、またある者は決闘で命を落とす」

9人のひとりは日本人である。江戸時代の和算の大家関孝和である。

今日TVのニュースで群馬県藤岡氏で丁度、「関孝和顕彰全日本珠算競技大会」が開かれている様子を伝えていた。

ところで、日本の数学の起源はいつまでさかのぼるのだろうか。

藤原先生のよれば、6世紀百済から仏教とともに暦が伝わったころにさかのぼるらしい。
奈良時代なって官吏養成学校では「九九」をはじめとした加減乗除がおしえられたということだ。

ということは、われわれが小学校で習った、二二が四、二三が六は奈良時代にお役人が勉強していたのが
その初めということ。

そこで、ちょっと古い「わくわく亭備忘録」から下記のネタ話をとりだしてきた。

万葉集にある次なる歌。

若草の新手枕(にひたまくら)を枕(ま)き初(そ)めて 夜をや隔てむ憎くあらなくに

歌の意味はとてもシンプル。

新妻がかわいくて、一夜でもはなしたくない、という新婚のラブラブの歌。

しかし、現代語に置き換えては元の歌の面白いシャレが消えてしまう。

元の万葉仮名に戻してみよう。

若草乃 新手枕乎巻始而 夜哉将間 二八十一不在國

ここでユニークな表現は最後にある「二八十一不在國」である。

「不在國」は「あらなくに」と読ませる。

「二八十一」とはなんだろう。

「二」は「に」と読む。

「八十一」は、ここが洒落ているところで、九九は八十一であるから、「八十一」と書いて「くく」
と読ませている。
「二八十一」はしたがって「にくく」と読ませるシャレた遊びなのだ。

おなじように、万葉集では「十六」と書いて「猪鹿(しし)」の意味に使っている。「四四十六」だからである。

万葉の歌人たちは百済から伝わった「九九」をはじめとする加減乗除を使いこなしながら、歌にまで
とりいれながら遊んだということで、なんだか「ゆかしい」気分になるではありませんか。