砂のプレゼント

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高さ3センチほどの小瓶の中味は、砂である。

海辺の砂を、こうして大切に、瓶にいれてプレゼントしてくださったのは、わくわく亭と同郷で、

高校文芸部で一年先輩だったYさんである。

7月に銀座東武ホテルで催された高校の同窓会で、1年ぶりに彼女に会った。

そのときに頂いたのである。

向島の砂。干汐(ひしお)の砂なの。きれいでしょ。汐の匂いがするのよ」

いつ郷里に帰ってとってきた砂なのか、聞き逃したが、

「うちに、たくさんあるの」と彼女はいった。


いましも甲子園では高校野球の熱戦がつづいている。球児たちは、甲子園の記念にと砂を持ち帰る。

Yさんも郷里の海辺を訪れたとき、浜の砂を手ですくいとって、大切に持ち帰るのだろう。

彼女は結婚して、ながく横浜に住んでいたが、その後三浦郡葉山町一色に移った。

一色にも美しい浜がある。海浜が好きな人なのだ。


わくわく亭は尾道の市街に暮らしていたが、Yさんは向島に住んでいた。

干汐(ひしお)には海水浴場があって、僕らも子供のころ夏休みには遊びに行ったものだ。


小瓶のフタをあけて、匂いをかいでみた。

かすかに、尾道の海の匂いがするようにも思う。

郷里の砂をプレゼントしてくれるって、いかにもYさんらしいやさしさである。



干汐の砂は、いま母の位牌がある仏壇にそなえてある。