『エンド・オブ・ザ・ワールド』(岡崎京子)
岡崎京子さんの作品評がつづいている。
こうなったら、独立した「岡崎京子の部屋」を設けたほうがいいのかな。
昨日読んだのは『エンド・オブ・ザ・ワールド』で5つの短編が入っている。
期間は1992/8~94/3である。
発表期間ついては、『リバーズ・エッジ』とほぼ重なっている。
だから『リバーズ・エッジ』同様にこちらも、バブリーな社会に充満していたセックスとバイオレンス、
不安と孤独に蝕まれていった少年少女たちの生態が描かれていて、これもまた、
短編集ながら読み捨てがたい秀作ぞろいなのだ。
そこで5つとも、それぞれ紹介することにしよう。その5篇のタイトルはつぎの通り。
◆ VAMPS
◆ ひまわり
◆ 水の中の小さな太陽
◆ 乙女ちゃん
「エンド・オブ・ザ・ワールド」と「ひまわり」の2つは雑誌増刊号の「世紀末ラブストーリーズ」
のために描いているから、「世界の終末」というタイトルにふさわしい内容になっているのは当然として
も、あとの3篇がまた、本のタイトルにぴったりの作品に仕上がっている。
いずれの主人公たちも迎える結末は悲惨なものであるが、岡崎京子の視線はあくまでも、やさしく、
いたわるようにかれらに注がれているから、読者のわれわれも、かれらが憎めなく、いじらしく思えてくるのだ。
それにしても、主人公たちの淋しさは、慰めてやりようがないほどに深い。