絵を画く小津安二郎(1)
北鎌倉に住んで鎌倉の作家達と、親交を結んでいた小津さんにはもともと文人趣味があった。
この作品は鎌倉に母の「あさゑ」さんと、久しく二人暮らしをした頃とあるから、かなり晩年にちかい頃
のものと思われる。
のものと思われる。
石坂さんが北鎌倉の小津邸を初めて訪ねたとき、白髪の小柄で上品なお婆さんがあらわれた。
彼女は真面目な澄ました顔をして、こう言った。
「安二郎は、ただいま“ニューヨークの王様”ですが、まもなく上がりますから」
当時チャップリンの新作映画「ニューヨークの王様」が話題になっていたのである。
「息子は入浴中」だというのに、その映画タイトルをジョークにつかって、初対面の新聞記者に挨拶する母親に、石坂さんはたまげたそうである。
生涯独身を通した小津さんは、なぜ結婚しないのだと訊かれると、きまって、
「家にいるババアで間に合っているから、ヒッヒッヒッ」と、
冗談にして、はぐらかしたらしい。
「家にいるババアで間に合っているから、ヒッヒッヒッ」と、
冗談にして、はぐらかしたらしい。
この母は昭和37年86歳で他界。
小津さんは、なんとその翌年に母の後を追うようにして、還暦の年に亡くなった。
小津さんは、なんとその翌年に母の後を追うようにして、還暦の年に亡くなった。