岡崎京子(3)
『PINK』も彼女の初期代表作に数えられていますが、やや月並みなプロットで、
わくわく亭の評価は低いのです。
『River's Edge』は彼女の人気ナンバーワンの作品ときいているが、まだ手にはいらない。
角川書店から新装版として2004年に出た『チワワちゃん』を手に入れた。
もとは1996年の出版されていたものを、マンガ大賞受賞を機に再版したものだろう。
これがおもしろいのである。
7つの短編集で、そのなかでも「チワワちゃん」と「チョコレートマーブルちゃん」が面白い。
前にも書いたが、「PINK」(1989)の絵はまだ発展途上だったが、この「チワワちゃん」
(1996)において、絵はあきらかに上達している。
少女たちの顔の描き方は「ヘルタースケルター」の描法になっている。
作家がはっきりと自分の絵の世界を確立して、自信を手にしていることが、看てとれるのである。
若い男女と知り合って、誰とでもHして、いつも孤独からのがれたいと焦っている女の子。
栃木県の実家には両親がいるけれど、家が好きじゃない。高校時代に「いいトモダチ」はいたけれど
会いたい友達は一人もいない。だから東京をはなれない。
その20歳の子が、ある日バラバラにされて、透明なごみ袋にいれられ東京湾に捨てられ、発見される。
たくさんの東京で彼女がつきあっていたトモダチのインタビューが物語の全部。
なぜ、だれの手によって殺されたか?
そんなこと、作者は追いかけるつもりはない。かわいいチワワちゃんが、どんなさびしい20年を
ほとんど無自覚に生きてきたか、それだけを絵にするのである。
東京に、チワワちゃんは、いまも何十万人もいるよ。
画像は「チョコレートマーブルちゃん」である。
タイトルの下に、こんなメッセ-ジがつく。
【学校が大嫌いだった人達と学校が大嫌いな子供達に】
裕子と優子、2人のユーコは、おなじダメ男にひっかかって捨てられたと知って、仲良くなる。
お金がないから、ちょっとオジサンを電話でさそって、ラブホテルでお金をいただいちゃう。
どこかへいきたい。なんかシアワセな気分がするところへいってみたい。
電車にのって、むかし野原で花がいっぱいだったところへ行ってみる。
そこは高層マンションになっており、原っぱなんかないよ。
「二人ともお年頃でチャーミングでラブリーでキュートでしたが、いまひとつ毎日さえないのでした」
作者は若い女の子たちの気持ちを代弁して、こう語りかけます。
きっとみんな退屈しているんだよ 何かに夢中になりたくて必死なんだよ みんな何かを好きになりたくて たまんないんだよ ねえ?そうじゃないかなぁ?
わかる、わかるよ!
わくわく亭のオジサンだって、きみたちの気持ちがさ。
ところで、2人のユーコちゃんが行ったところが、「ひばりヶ丘」駅だったんだよ。
わくわく亭が住む大泉学園から電車で二駅目、5分のところ。^^