横尾忠則『Y字路』(3)

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〈トワイライト・タイム Ⅱ〉という2003年の作品。

トワイライトとは薄暮とか、たそがれ時のことである。


むかし、白黒テレビの時代に、アメリカ制作番組で「トワイライト・ゾーン」というのがあった。

たしか1本が30分の短い作品で、怪奇現象、超常現象を扱った短編映画だった。




この「Y字路」は〈暗夜光路〉シリーズのような「闇」を描いてはいないのだが、
どこか不安な絵である。


どれかの民俗学の本で、「たそがれ」と「かわたれ」どきは、魔物とか、見てはならないものに出遭う時間帯だと記してあった。


たそがれ時とは、日暮れて、畑中や川っぷちを、前方から人らしきものが来ても、誰だかわからない。
「誰(た)そ、彼は」と見分けがつかぬので、「たそがれ」という言葉になった。


「かわたれ」とは、まだ明けきっていない朝の薄暗い時間帯をいって、「彼(か)は誰」から
この言葉ができた。


人々は、その時間帯に、すれちがう人影らしきものが、たとえ声をかけてきても、けっして返事をしては
ならないと子供らに教えたのである。

うっかり返事をしようものなら、魔物につれさられてしまうのだと。

神隠しに遭うのだと。


逢魔が時(おうまがとき)というのも、また夕方の薄暗い時間のことで、魔物に出逢う時間のことである。


さて、このY字路で、どちらの路へ行きますか。

選んだ道で、前方から男か、女がやってくる。

その人影のほかに、前にも後ろにも、動くものはない。

決して相手の顔を見てはいけません。見たら、さいご。

それって、大抵は狐(キツネ)ですよ。