高麗神社の作家たち(7)

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(自宅でくつろぐ檀一雄



檀一雄坂口安吾が、高麗神社に参拝したのが昭和26年の10月18,19日だった。

その頃安吾の神経は小康状態だったのだろうが、睡眠薬として常用するアドルムのために精神の
錯乱状態を呈することがあった。

11月4日、これも有名になった「ライスカレー事件」を起こす。

いまではライスカレーとはいわないが、カレーライスと同じ料理である。

事件については安吾の妻坂口三千代さんの『クラクラ日記』と檀一雄の『小説坂口安吾』に書かれている。

その日、アドルムの影響下にあった安吾は、妻の三千代さんに、

ライスカレーを100人前注文してくれ」と言い出す。

夫妻は檀一雄邸に寄宿しており、檀家の家族と出版社の社員たちをあわせて10人ほどの人数はいたが、それにしても100人前は多すぎた。

しかし、言い出したら金輪際後には退かない夫の性格を知る夫人は、石神井公園駅に近い食堂へ行って、「ライスカレー100人前」の注文をしたのである。

食堂のおやじは喜んで、あとからあとから、ご飯を炊いて、ライスカレーの出前を檀一雄邸にはこんできた。

安吾がまっさきに、庭の芝生の上で黙々と食べた。

もちろん、100人前は食べきれなかった。

この事件を檀一雄は、彼らしい文体でこう書き残す。


安吾流の人生を、未知の規模に創出する熱願である…


太宰治との交友においてもそうだったが、友情においてはトコトン熱誠をみせてつき合う、好漢
檀一雄らしい徹底した安吾理解である。

もちろん檀家の長女ふみ、3人の息子たちも、庭に出て、ライスカレーを食べたことであろう。


以上、わくわく亭は高麗神社で見た安吾檀一雄の名札から、長い記事を書いてしまった。