木村伊兵衛(12)佃島

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木村伊兵衛の傑作は、まだたくさんあって、パソコンに収納してあるのですが、ひとまずこれをUPし

て、おしまいにします。また後日第二部として紹介することにしましょう。



作品のタイトルは「佃島にて」です。

東京湾に突き出た佃島に、チンドン屋が来たのか、それとも大衆演劇の一座が公演の宣伝にきたのか。

後者かもしれないですね。女剣劇の一座かもね。

「こんばん、お芝居見に来てね」と役者(女か?)がチラシを配っている。

アコーデオンを引いているのも役者でしょう。

子供たちは一緒について歩いている。

頭の上に棚引いているのは、洗い張りをしている着物だろう。生活臭はぷんぷん匂う。

1953(昭和28)年の平和を取り戻した東京の下町の光景である。


               ☆     ☆     ☆


 木村伊兵衛の「居合い抜きのようなライカ」の素早さ、という逸話を読んだ。

 首相の池田勇人を撮る仕事があって、池田邸に行ったが弟子に写真を撮らせておいて、自分はなかなか

カメラを構えない。池田夫人が池田の衣紋を直そうとしたとたん、居合い抜きのような素早さで、さっと

手持ちのライカで撮った。

 人物の、演出のない自然なしぐさを撮ることにおいて抜群の才能があったといわれる。


 もうひとつ、美貌ばかりでなく才女の誉れも高かった女優の高峰秀子さんが、エッセイの中に木村伊兵

衛と土門拳の仕事ぶりをおもしろく比較して書いているらしいので、それも紹介します。

 「いつも洒落てて、お茶を飲み話をしながら、いつのまにか撮り終えている木村伊兵衛

 「人を被写体としか扱わず、ある撮影の時に、京橋から新橋まで3往復もさせ、とことん突き詰めて

撮るのだが、それでも何故か憎めない土門拳

 一瞬の人の姿を写そうとする居合い抜きの木村伊兵衛と、納得のいく写真をもとめて写真を撮り続け

土門拳と、その芸術気質の違いをつたえてくれます。