さだめ川(1)
ちあきなおみの歌が聞きたくなる夜がある。 一度聞くと、後を引く。 それも、船村徹の曲だ。 船村の曲は聞く者の感情を、川にたとえれば、上流へ上流へと誘う。時にたとえれば、 過去へ過去へと導く。 記憶の川をさかのぼれば、失った遠い心の傷跡へたどりつく。 別れのつらさに泣いた女の涙顔にたどりつく。 人生の表面を快活に歩いていた振りをしながら、裏面があったこと、裏面には哀切なものを 眼に見えぬように埋めて隠してきたことを、思い起こさせる。 誰にでもあることなのさ、と船村徹のギター曲がいうから、そうともさ、そんなことはわかっている さ、もうそんなことに騒ぐ年齢でもないよ、と頭のなかでは呟いている。 船村徹の楽曲にとって、ちあきなおみは「申し子」である。 「喝采」で日本レコード大賞をとった彼女だが、彼女の歌手としての本領は1975年に唄った 船村の「さだめ川」で発揮された。ついで76年の「矢切の渡し」、88年の「紅とんぼ」へとつづく。 すべて船村作品だ。 「さだめ川」を聞いてみよう。
NHK紅白の画像がみつかったので、それを転載します。(1975年だろう)
番組の性格上、歌は1,3番で2番が入っていないのは不満ですが。
せっかく船村徹のギター演奏まで入っていながら、この名曲の前奏がよく聞こえません。
そこで、テレサ・テンが唄う「さだめ川」もYOUBUTEから転載します。