『百日紅』(12)再会

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 若い頃、歌麿美人画のモデルとなった女おたかが、歌麿の死後8年経って、一人で、ひっそりと

 死期をむかえようとしている。

 結核におかされて病床にいる彼女を、北斎とお栄とが、それぞれに見舞ってやる話。

 北斎が見舞った日に、おたかは庭で、行水をしていた。

 見ると、おたかの肉体を透けて、庭の桔梗の花が北斎の目にうつる。

 おもわず、「おたか!!」とさけんでしまう。

 それが、UPした画像です。

 死期が近いと、人は影が薄くなるという。

 おたかは、歌麿ではなく、幼なじみの、すでに死んでいる男の迎えを待っていた。

 薄幸な女を、抒情性のある絵で描いた、『百日紅』の中でも印象深い一作です。

 それが、エピソード其の13「再会」です。


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「離魂病」の記事で、岡本綺堂の小説「離魂病」を文庫本でどうぞ、とおすすめしましたが、綺堂の「離

魂病」もまた、人の命が尽きかけて、影が薄くなるときに起きる凶兆として描いていますか

ら、上記『百日紅』の「再会」とも相通ずるものがあるでしょう。