三つ星

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 昨日の話題をさらったのは「ミシュラン・ガイド」が発売になって、売り切れる店舗が続出したという
 ニュースでした。

 グルメの国日本かなと見ていくと、最高評価となる「三つ星」を取得したという都内8店舗のうちに、人形町の日本料理店「濱田屋」というのがありました。

 しかし料理代が2人で5万円というのでは、庶民が食事に行ける場所ではなく、会社接待とか政治家の会合場所として利用されているのだろう。

  そんな感想をもって、YAHOOニュースを見ていたら、国会では民主党議員が額賀財務相にたいして、山田洋行の元専務と濱田屋で会食したのではないか、と質問したもようです。

 例によって、額賀さんは「記憶にない」と返答し、濱田屋側では取材に答えて「お答えできません」と
いったらしい。

 これまで守屋元次官と山田洋行の元専務、かれらは同席して食事をしたといい、額賀、久間元防衛相らは記憶にない、と答弁や証言における「記憶」の食い違いが延々とつづいているわけで、真相解明は「藪の中」となっている。

 このままでは、国会の質問や証人喚問には期待がもてません。

 かくなる上は、江戸北町奉行所に訴え出て、イレズミの金さんこと、名奉行遠山金四郎にさばきを
つけてもらうしか方法はなさそうです。


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 お白州には悪代官守屋、武器商人山田屋の宮崎、額賀勘定奉行、久間元御具足奉行が引き出されています。

 遠山金四郎町奉行職でありますから、本来は町人の宮崎しか取り調べる権限はないのですが、
このたびは、幕府大目付の代役として士分の、守屋、額賀、久間も取り調べることになっております。

 四名の罪状認否がすすめられますが、山田屋の宮崎はすでに自白をしており、

「はい、もうしあげまする。濱田屋におきまして、酒肴をすすめ、芸者も抱かせてござります。
 それぞれに、100両をさしあげまして、次期の御具足調達、修理の仕事を、てまえにおまかせくださるようお願いもうしました」

「その際、額賀はなんと申していたか」と金四郎。
「はい、額賀さまは、ニヤリとなされまして、ひとこと、山田屋おぬしもワルよのうと」
「久間はなんと申したか」
「はい。久間さまは、そんなことは、仕方ない、ともうされました」
「仕方ない、と申したか。間違いないか」
「いえ、そんなことは、しょうがない、だったかもしれません」
「あい分かった。つぎに、守屋、その方は濱田屋で、たしかに額賀と同席しておるのだな」
「はい、額賀奉行は遅れて参られましたが、最初に退席なされておりました」
「うん。これまでの取り調べにて、幕府御具足調達の山田屋への口利きの罪状はあきらかなり。
 守屋は遠島、宮崎は死罪を申しつける。額賀と久間両名は、大目付から切腹仰せ付けられるであろう」

 守屋と宮崎は畏れいってお白州に土下座したままであります。

 しかし、額賀と久間は昂然と頭をあげて遠山奉行を憎げにねめつけて、いわく、

「いかなる証拠がありましょうや。われらに記憶はござらん。山田屋のウソ偽りじゃ。守屋はボケて
 記憶にあやまりがござる」と額賀。
「いっしょに、メシを食べたかもしれませんが、それは、しょうがないのでござる」と久間。

 そのとき、遠山金四郎、ガハハハハ、と高笑。

「おい、額賀、久間。よおっく聞けよ。てめえたち、人形町の濱田屋が『ミシュランの三つ星』
 だと知ってるだろう。あの席で『三つ星』のサシミを喰わなかったとはいわせねえぞ。その
 サシミをこしらえた粋な板前の兄さんを、まさか見忘れちゃーいめえ」

 さっと、裃を脱いで、金四郎はもろ肌を、ぐいとお白州の2人にみせつけました。

 なんと、金四郎の背中には3個のミシュランの星のイレズミが輝いていました。

 「どうだ、悪人ども、恐れ入ったか」

 「へへー。恐れ入りましたー」4人はお白州にひれ伏して、もはや頭を上げることもできないのでした。

 そののち、だれいうとなく、金四郎は「ミシュランの三つ星金さん」とよばれたのです。