本をつくるという心の贅沢(3)

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 中野朱玖子さんの詩集「詩苑物語」です。副題が「死を想え」である。

 中野さんは詩人です。短歌集もある歌人です。句集もある俳人でもあります。

 彼女の短歌と俳句については、別の日に紹介しようと思って歌集、句集の写真もとってあるのですが、
いずれも角川書店からの出版です。

 角川書店からの出版ではあっても、作者である詩人は装丁作業への参加意識はつよかったらしい。

 中野さんからの手紙で知ったことですが、「函につける絵を使用するための交渉が長びいたために、出版がとても遅れたのです」と。

 わくわく亭の本の装丁などで、チラリとも海外の絵画をライセンス交渉して使いたいなどと、夢にも考えたりしませんよ。

 絵画の版権を所有しているのはイタリアのだれからしい。

 中野さんは、自分の詩集をおさめる函には、どうしてもその絵画がイメージとして欲しかったのだろう。近頃の言い方をすれば、知的財産権の交渉を終了して、めでたく出版されたということだ。

 絵画の物語るものを、不明にして僕は理解していないのですが、詩集の副題が「死を想え」です。
 さらに帯に詩人みずから選んだ言葉でしょうが、つぎのようにある。

 『問いとしての、認識としての、生きるすべとしての、唯一の「凶器」としての詩、191篇、
  1978年~2005年』

 生きるすべとしての詩という凶器をにぎりしめて、死を想いつつ生きる、という詩人の覚悟のほどが、
その絵画には読み取れるのかもしれません。

 本は部厚いつくりで、クロス装。金色のエンブレムのような模様が中央に嵌め込まれています。

 この詩集にもまた、いい本をつくろうとする心の贅沢がみごとに浮かび出ています。