村上春樹の「グレート・ギャツビー」本をつくる心の贅沢(2)

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 村上春樹さんの「グレート・ギャツビー

 「本をつくろという心の贅沢(1)」で、このコーナーの主旨はのべました。

 村上さんの豪華版「グレート・ギャツビー」はもちろん私家版ではありません。

 中央公論新社からは、この豪華版と普及版の2種類を同時発売しています。

 そして明らかに、この豪華版の制作には作者村上春樹さんの思い入れがたっぷり注入されているわけです。

 村上さんが、世界の文学の中でもっとも好きな本として名をあげたのが、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」とレイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」の2冊。
 その2冊を去年と今年に翻訳出版した。

 その辺の話については、僕はブログに「『カラマーゾフの兄弟』と新訳ブーム」(9月9日)に書いたから、ここでは省略しますが、彼が「グレート・ギャツビー」の普及版だけでは、満足できなかった心裡は察しられる。

 函入れにしたこと、装丁のハードカバーがアメリカのジャズエージを思わすイラストで装飾されていること、そして特筆すべきは「“グレート・ギャツビー”に描かれたニューヨーク」という小冊子の付録がつけてあることだが、これらに村上春樹さんのアイディアが取り入れられているだろうことは、明らかでしょう。

 敬愛してやまない本を、みずから翻訳して、そこに愛情をたっぷりかけて、造本にまでかかわりたい。

 翻訳のすばらしさは、さきのブログで讃えたわけだが、付録までつくらねばならないほどの作家の
愛情がほとばしっている。

 ここにまた、本をつくるという行為に村上春樹さんの心の贅沢を見ることができるじゃないですか。

 近年、今江さんや村上さんのような、本のこしらえに費用も時間も惜しまず没頭するタイプの作家って、ほとんどいなくなった。