白いグリズリー

 NHKのBS1で「地球アゴラ」の再放送を見た。たまたまチャンネルを替えていて、見たのだったが、ショッキングな新事実が語られていた。

 アラスカに住んでいる日本人の犬そりレーサー夫妻にインタビューをした中で、語られたことだった。

 まず一枚の写真が紹介された。夫妻の撮影したものだったか、かれらの友人が撮ったものだったか忘れたが、アラスカ北部で写されたものらしい。
 夜間撮影したもので、そこには1頭のシロクマ(北極グマ)と3頭のグリズリー(北アメリカヒグマ)が写っていた。うち2頭のグリズリーはまだ子グマだった。

 自然界では、ありえないと考えられてきたシロクマとグリズリーの出遭いシーンなのである。

 犬そりレーサー夫妻は説明する。

 「アラスカのグリズリーは南部の海岸地方にしか生息していないし、シロクマはアラスカ北部から北氷洋にかけて生息しているから、こんな組み合わせは人間が仕組みでもしない限り、自然界ではありえない
ことなのです。
 ところが、地球温暖化の影響で、アラスカでは氷で覆われているはずの地域が緑の大地になり、海から氷が姿を消すようになったために、グリスリーがどんどん北に進出して、このようにシロクマと遭遇する事態が起きたと考えられます」

 北極海の氷の面積が、この数年で1/3の大きさに縮小している。氷上で生活するシロクマはエサ不足のため、急速に個体数を減らしており、絶滅危惧種に指定されていることは、われわれも知っている。

 夫妻は話をつづけて、

 「アメリカ人の研究者が、最近白いグリズリーを捕獲しました。外見はシロクマです。しかし、背が
著しくもりあがっているのは、ヒグマの特徴なのです。そこで、DNAの分析をしたのですが、結果は
シロクマとグリズリーの混血であると判明したのです。
 これは、ごく最近のニュースなので、これから科学雑誌やマスコミに発表されるでしょうから、
ビッグニュースになることでしょう。
 シロクマ、すなわち北極グマと、グリズリー、つまりアメリカヒグマの生息地が接近し、いずれは
ひとつになってしまうという、そのサキガケとなる発見でしょう。
 ことに生物学者にとっては衝撃的なニュースですよ」

 日本の記録づくめの猛暑、ニューヨークでは真夏に15度Cの晩秋の気温。

 地球環境には、人間の予測をはるかに超えた大変化がはじまりつつある。

 いったん方向がきまって、自然変動のメカニズムが動き出したなら、もはや人間の手で止めることはできないだろう。

 2007年は、地球自然の破滅的変化を象徴する白いグリズリー発見の年として、後年、記録
されるかもしれない。