ベストセラー

イメージ 1

イメージ 2

 わくわく亭が書いた小説2冊が、書店でベストセラーにランク入りした、というのは最新のニュースではありませんが、本が売れにくい今の時代に、どんな本を出版するか、どこで売るか、ということは
作家にとっては考えてみなくてはならない大事な問題です。

 なにせ、日本の出版事情は、新刊書の出版件数は伸びているものの、販売部数は減少一途なのです。

 本を書いて生活する、それがつまり作家というものですが、作家活動だけで生活をしていける「作家」はどれだけいるのだろうか、と考えてしまう。

 作家の数もまたバブル状態になっており、過当競争のもとで、縮小するパイの一片である「純文学」系の作家たちの本は売れないし、著作での生活は成り立ちがたくなっている。

 書店に行ったら、有名作家の単行本のコーナーで、どれでもいいから手にとって奥付を見たらわかりますよ。どれを見ても、初版本だ。つまり再版がないってこと。
 再版がない本は、出版社にとって利益がでていない本なので、出版社はその作家の本を出したがらなくなるわけ。
 版をかさねているのは、芥川賞直木賞を受賞したばかりの、いまが売れどきの作家の本と、新書本、
文庫本。
 おまけに、配本部数の50%が返本されるという慢性的な出版不況では、作家は自衛しなければやっていけない。
 
 さてそこで、冒頭のベストセラーの話に戻るわけです。

 わくわく亭の「尾道」ものの本は、周辺から「尾道といった地方名をつけると、東京の書店では売れないからと、配本しても書架に並べてもくれず、まっすぐ返本のコーナーへ積まれてしまうから損だぞ」
 とさんざん助言(警告?)されたものでした。

 日本の書籍マーケットは東京圏だというわけです。そこで「地方」(ローカル)色の書名がついたものは、まず書名でもって「売れない本」の烙印が押されるというのだ。中継ぎ店が、取り扱いをいやがる
ともきかされた。

 僕はあえて「尾道」の名前をつけてもらったのですが、助言(警告?)通りの結果となった。
東京ではいくつかの大型書店、たとえば紀伊国屋ジュンク堂などで、ほんの少々売れただけ。
 だいいちベストセラー作家本のように支店ごとにに数十冊といった配本はできないから、せいぜい2,3冊だよね。売れたってしれてるわけ。

 まとまって売れたのは尾道を中心にした広島県の書店だった。(いまでもボチボチ売れています)

 なかでも、本のタイトルにつけた「尾道」に本社がある啓文社書店。およそ20店舗の支店網がある。

 『尾道船場かいわい』は2000年11月の発行だったが、2001年1月現在の啓文社発表
ベストセラー(フィクション部門)で第9位にランクされました。

 天童荒太内田康夫宮尾登美子高杉良大江健三郎大沢在昌が上位にあり、下には翻訳本の
「朗読者」がならんでいるのだから、立派なものでしょう。

 『尾道物語・純情篇』は、さきの成功をうけて、また「尾道」の名前をつけた。
 2005年6月にベストセラー10位(なにかの手違いで、ノンフィクションの部門に入れてあるが)
に、めでたくランク入りしました。

 1位が「国家の品格」、8位が「人は見た目が9割」、9位が「病気にならない生き方」で、それらは
今でもまだ売れ続けている新書本じゃないですか。
 その中で10位は、これまた立派なものではありませんか。

 もちろん、全国的なベストセラーではないのだから、これまた「ローカル」な結果です。

 それでもね、尾道の書店に行ってみたら、僕の本が平積みになっているし、レジの横にまで
 積んであるのだから、「カンゲキ」です。

 「地方の時代」とマスコミなどがいうけれど、島田洋七さんの「がばい佐賀のばあちゃん」の成功例があるように、地方から中央へ攻め上がるルートだって、ないわけじゃあない。
 
 尾道出身の映画監督大林宣彦さんが、僕の小説に眼をつけて映画化でもしてくれたら、「地方から中央」が夢ではなく実現することだってある。

 そんなことなくたって、僕の「尾道本」が尾道でベストセラーになったことで、古い言葉だけれど、
「故郷に錦を」飾った気分が味わえた。

 啓文社さん、ありがとう。

 この経験から、売れる場所で本を売る、という自衛策としてのヒントを得たと、僕は感じているのです。
 そして、他の作家たち、空の星ほどの数がいる作家たちが書くことの出来ないものを書いて本にすること、これも自衛のためのヒントになります。

 なにも尾道本だけ書くつもりはありませんよ。
 
 しかし、売れる本を書いて、売れる場所で売る、ということは、これから本を売りたいとせっせと作品を書いている、これから世に出る作家たちにとって、なにかの参考になるのではないか、とお節介ながら、今日のブログに、「いかにして、わくわく亭はベストセラー本を書いたか」
という秘伝のワザについて書いたのでした。(笑)