山手馬鹿人の江戸小咄

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 江戸小咄(こばなし)については、どなたも大抵ご存知でしょう。

 江戸時代、それも江戸後期につくられた、短い笑い話、落とし話の総称で、現代の落語のもとになっています。
 
 この「わくわく亭雑記」の中でも、「大田南畝」コーナーで、大田南畝が山手馬鹿人(やまてのばかひと)の名前で書いた小咄本について、ごくごくかんたんに触れています。
 
 一例として《橋の下》という話をとりあげましたが、それは、乞食(これなんか、いまでは新聞用語としては使用しない言葉になっているはずですが)の夫婦が、大晦日の橋の上のさわがしい人通りについてかわす、滑稽な会話です。
 ほんの5,6行の短いものですが、立派に「落とし話」になっており、しかも南畝らしい、きれのある粋な文体が愉しめます。

 いっそのこと、山手馬鹿人の小咄の中から、おもしろいものを10ほど選び出して、お楽しみ頂こうと思いつきました。

 南畝の文章を、そのままというのでは、僕わくわく亭がしゃしゃり出る幕がありませんから、現代では分かりにくい言葉やいいまわしについては、てきとうな現代語に言い換えたり、「落ち」の意味が分かりにくいものについては、野暮にならないていどの解説をつけたりしながら、紹介してみることにします。


 第一回は、短いも短い、超みじかい話。

       《壺》(つぼ)

  そそう者(そそっかしいやつ)、壺を買いにいったところが、うつぶせにしてあるのを見て、
  「このような、べらぼうな、口のない壺があるものか」といいながら、ひっくりかえして、
  「これこれ、底もぬけている」

 これに説明はいりません。たった3行で、無駄がない。さすがだなあ。