壇蜜さんの小説

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壇蜜さんは、元グラビアアイドルで、テレビのタレント、映画出演からエッセイまで

書くというマルチな才能の持ち主らしい。文春文庫から『壇蜜日記』がシリーズで出版

され多くの読者を獲得しているとか。才色兼備とは、まさに壇蜜さんにふさわしい言葉。

『文学界』3月号に彼女が「タクミハラハラ」という小説を書いている。

いよいよ小説の才能まで発揮か、どんなものを書くのだろう、と興味津々で読んでみた。


タクミという、今で言う草食系大学生が主人公で、つきあっていた女子学生には物足りなさが

理由でふられ、バイトでメガネ販売店につとめ、一人暮らしの老婦人のもとへネガネのアフター

サービスに訪ねたところ、緊張が原因の胃痛で倒れる。婦人から店へ連絡があり、メガネ修理を

担当する若者の手助けをうける。彼が冴えない男なので、それまで見下していたのだが、彼も

神経性の胃痛の経験者だった。タクミは自分のアパートに戻って、実家に電話してみると、

兄が久しぶりに家に戻っていた。兄は近く結婚するという。タクミは兄に、胃痛に効く薬を教えて

くれと訊ねる。


あらすじは、こんなもので、繊細な神経の持ち主である現代の若者の平凡な日常を描いた短編小説

である。瀬戸内寂聴林芙美子のデビュー作のような濃厚な男女関係を描いた小説を期待すると、

期待外れである。テレビで壇蜜さんの話すのを見ると、脱力させるような、ユーモアがある。

小説も、力の抜けたような書き方をしており、それが将来の作品の持ち味になっていくのかも

知れない。

しかし、壇蜜さんの小説は、まだまだのレベル、と言わねばならない。

作者が壇蜜さんでなかったなら、この小説は『文学界』に掲載されることはなかっただろう。

この『文学界』3月号は「岡崎京子は不滅である」というマンガ家の岡崎京子特集号になって

おり、それに壇蜜さんの小説掲載である。

わくわく亭は歓迎するものであるが、『文学界』の質的変化はどこへ向かうのだろうか。