新選・百人一首
政治家、財界人、軍人、歴史人物、作家、詩人、評論家、学者、宗教家、思想家、芸術家、その他
各界の著名人の短歌から選んだもので面白かった。
へ送った手紙に書かれた恋歌である。
うつし絵に口づけしつつ幾たびか 千代子とよびてけふも暮しつ
昭和17年7月といえば、太平洋戦争の最中であり、7月には日本軍はフィリピン全土を占領して
いるが、その前月6月5日から7日にかけてのミッドウェー海戦では日本軍は敗れている。
当時山本長官は呉軍港にいて58歳だった。「うつし絵」とは写真のこと。手紙の翌年昭和18年
4月16日山本長官はブーゲンビル島上空で米軍機に撃墜されて戦死する。
山本長官が戦死すると、千代子は海軍省から自決を迫られた。結局は自決は免れるが、五十六からの
手紙約60通は没収される。ただ彼女は数通だけは隠し持っていて、その中の1通にこの
恋歌が記されていたという。