ショウペンハウエル『読書について』
ショウペンハウエル『読書について』PHP新書、定価:本体950円
ショウペンハウエルは哲学者だが、これは読書についての感懐を書いたエッセイのようなもので、
渡部昇一さんが「新訳」した、読みやすい、そしてきわめて辛口の読書論。
「悲観の哲学」を説いたショウペンハウエルだけに、つならない本を読んだり、
読むばかりで自分の頭で考えない人には、まことに手厳しい読書論である。
読書とは、自分で考える代わりに他のだれかにものを考えてもらうことである。 大量に、またほとんど一日じゅう読書する人は、自分で考える能力をしだいに失ってゆく。 読書中のわたしたちの頭の中は他人の思考の遊び場であるに過ぎない。 たくさん読書すればするほど、それだけ読んだ内容が精神に跡をとどめることが少なくなる。 実に多くの学者がこの例にあてはまる。彼らは読書して馬鹿になってしまったのである。
自分で考えることをしないで、ただたくさんの他人の書いた本を読んで、さも自分が考えたかの
ようなしたり顔をして、右から左と学生たちにおしゃべりしているガスパイプのような学者や教師を
「馬鹿」と呼んでいる。
これは単純な読書礼賛の本ではない。