伝説のはじまり

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中村勘三郎が57歳の若さで死去して、すでにさまざまな場所で、すぐれた追悼文が書かれている。

これから、伝記も書かれることだろう。そして、歳月が過ぎて行くうちに、勘三郎伝説というものも

伝えられるようになるだろう。

演出家の串田和美さんが12月11日に朝日新聞に、美しい追悼文を発表している。

それを読むと、そうか、すでに勘三郎の伝説ははじまっているのだと、わくわく亭は思った。

そのごく一部分を紹介する。

 僕は中村勘三郎という不思議な生き物を知っていた。

 ――――――

 けれど人間的に振る舞おうとする彼の挙動は、あまりに人間的すぎて不自然な気がした。

だから僕はすぐにピンと来た。彼は芝居の神様の子どもだったか、そうでなければ、神様の

まわりでおどけていた魔物の小僧だったのだ。そしてこの世に遣わされた。

 ――――――

 ああ勘三郎さん、もう一度あなたと話がしたい。肩を抱えあって笑いたい。

 何故芝居の神様は彼を急に呼びもどしたのだろう?僕の能力ではどうしても理解できない。

誰も彼のことを決して忘れないだろうけど、いつか彼のことを幻だったのかもしれないと思い出す。

その時彼は不思議な信号で、僕たちに大切なたくさんのことを語り出すだろう。

 ――――――

 
 こうして、名優といわれた人の伝説ははじまるのだ。

(写真は林義勝撮影の中村勘九郎演じる「春興鏡獅子」)