マイナリさん再審無罪を喜ぶ
いわゆる「東電OL殺人事件」の容疑者になり、無期懲役で15年間も入獄していた
ネパール人のマイナリさんが、再審開始によって無罪が確実になった。
第一審が無罪判決で、そのときすでに冤罪であるというのが大方の見方だった。
被害者が東電のエリート社員でありながら、毎夜澁谷の道玄坂上で売春をしていた
というスキャンダルがマスコミの関心の的になって、事件はセンセーションをまきおこした。
その中で、ノンフィクション作家佐野眞一氏が事件直後から被疑者の無実を信じて
警察のずさんな捜査、真実追求より犯人をあげることに血眼になる警察、検察の体質、
そしてそれに加担する裁判所の官僚主義を告発するノンフィクション「東電OL殺人事件」は、
この再審無罪の流れに大きな貢献をしたと思う。
佐野さんは獄中のマイナリさんを訪ね、無実を信じると力づけ、寒いと知ってジャンパーの
差し入れをしたりした。事件現場ばかりかネパールのマイナリさんの家族にも会いに行き、
事件の真実を追究する姿は、これがノンフィクション作家の魂なのだ、と感銘をうけた。
マイナリさん無罪、という結論となり、佐野眞一氏の「東電OL殺人事件」はノンフィクションの
名作となるだろう。
「週刊朝日」における「ハシシタ 奴の本性」によって、佐野氏の評価に疑念をもたれたかもしれない。
しかし、佐野氏の「東電OL殺人事件」の真価に変わりはない。