直葬(ちょくそう)
「直葬」という言葉を知った。
直葬は「ちょくそう」または「じきそう」と読むのだそうだが、近年の造語だろう。
病院などで死亡すると、通夜や葬式をすることなく、まっすぐ火葬場に送り、焼却して、
死亡届をして、おしまいにするのを「直葬」というのだそうだ。
東京都では、葬儀のおよそ30%が、この直葬になっているとのこと。
これほどまで直葬が多くなっている理由として、つぎの3つがあげられている。
1)経済的な理由。困窮している高齢者世帯にとって、少なくとも数十万かかる葬儀費用が大きな
負担となる。
2)孤独死に代表されるように、独居老人が激増している。死者に家族、兄弟姉妹があっても、
深くかかわりたくないとして、火葬だけを望む。いわゆる「無縁社会」の実情。
3)病院で死去すると、葬儀社と葬式の僧侶にいいようにされて、法外な費用を請求される
という不信感があって、葬儀社と僧侶がかかわることを中抜きして、直葬を選ぶ。
グラフで見る通り、日本人の高齢化にともなって、独居老人世帯が激増している。
いまは老夫婦で年金生活している世帯でも、数年後には、独居老人世帯になる。
全国に500万以上の独居老人世帯があり、今後増加の一途をたどる。
直葬が30%を超える東京では、火葬場の焼却能力が不足しているのだそうだ。
周辺住民の反対によって、新規の火葬場建設は非常に困難になっている。
火葬場が不足するため、埼玉や千葉などの隣接県の火葬場を利用する事態になっている。
病院で死去すると、すぐに葬儀社がやってくるが、葬儀社は火葬場の混み具合などに精通している
から、火葬場所、日時などの手配は比較的スムースにできる。
しかし、葬儀社の手を借りないで、直葬しようとすると、そうしたこともスムースに運ばない
ケースもあるだろう。
かつては、自宅で死をむかえるのが当たり前だった。死んだら、家族親戚があつまってきて、
葬儀について協議して、菩提寺で葬儀、墓は先祖からの決まった墓があって、そこに
納骨された。費用は掛かったが、貧しければそれなりに、なんとかできた。
だから、自分の葬儀がどうなるか、自分個人で考えなくてもよかった。
しかし、旧来の家族制度はなくなり、大家族から核家族へ、さらに高齢の夫婦世帯から、
独居老人世帯へと移り変わった。
地方から大都市圏へ移り住んだ者が、無縁社会で高齢を迎えると、自分の葬儀まで
しかし、直葬後、火葬場に残された遺灰の送り先がきまっていない場合は、さらに
なやましい。