『尾道物語・旅愁篇』の感想

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古文書の解読、翻刻をボランティアでなさる女性から、写真のカードで寄せられた『尾道物語・旅愁篇』

の感想です。
早速読ませて頂きました。

どれも心に沁みるお話でしたけれど、日が経った今いちばん鮮やかに思い出されるのは

「二月の岬」です。

主人公の追憶ではなく、お父様の旅日記を描いていらっしゃることで、いっそう物語の

奥行きが増しているように思いました。

そして、たいへんうらやましく存じました。

亡くなりました私の父もきっと、何かの形で、秘めた大切な日々があったことでしょうと思い、

このようにして、父の足あとを辿ることができたらどんなによかったことでしょうと、

思わずにいられませんでした。

忘れられない作品です。

何年かすごしてから、また読ませて頂きたいと思っております。


坂東流日本舞踊家(男性)から、
いつにかわらぬ文学へのあつい情熱、心意気が伝わってまいります。

古い作品から三篇読ませていただきました。

「尾道のラーメン」寒い時期の極上のあたたかいラーメン、食欲をそそる短編ですね。

貴兄が三人男兄弟の次男であることをやっと確認しました。

やさしくしっかりものの母、兄弟愛、ラーメン同様心が温もりました。

「あびこ物語」初めて社会人として住んだところがあびこのアパート。そこに居住する

親切で世話焼きの人々、むかし大阪にはそんな人が大勢いましたね。

高見慶子の描写がいいですね。こんな人むかし出遭ったことがありますよ。野暮だが

可愛いくてお人好しで明るい人柄、むかしの大阪下町にはこんな人がいたことを思いだしました。

「三原まで」十頁以後の雨の中、湧き湯につかっている思春期の少年少女の描写、

よく書けていますね。思春期ものの映画の名場面みたいです。

大阪から三原までの車中でたまたま出遭った見知らぬ男の回顧談になるという構成も

よくできております。

あとの三篇読むのは少々あとになります。(略)