「方丈記」
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
世中(よのなか)にある人と栖(すみか)と、又かくのごとし…。
読まれているというのも肯けるのです。
書架をさがしてみたが、薄い文庫本はどこかに紛れ込んだか、見あたりません。
著者の解説文がセットになった本で、1500円ちょっとの値段。
もちろん、岩波文庫にしました。
なにしろ、文庫で本文は、わずか30ページの短いもので、
マクドナルドでカフェラテを飲みながら読み終えてしまいます。
本文にはかなを振ってあるし、下段にはていねいな校注がついているから、
現代語訳の必要はなく、よみやすい文章です。
現代語や超訳なるものがつくと、どうしても原文を読むのがおろそかになって、
超訳文だけ読んだりするもの。
鴨長明は方丈の草案に暮らしながら、悟りきれず、
汝姿は聖人(ひじり)にて、心は濁りに染(し)めり、と自戒するところ、
煩悩の人らしくて、親しみをを覚えます。