「方丈記」

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ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。

よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。

世中(よのなか)にある人と栖(すみか)と、又かくのごとし…。


鴨長明の「方丈記」がいま売れているということです。

東日本大震災以後、数々の天災被害の惨状を書いて仏教の「無常」を説く「方丈記」が

読まれているというのも肯けるのです。

書架をさがしてみたが、薄い文庫本はどこかに紛れ込んだか、見あたりません。

散歩の途中、書店で岩波文庫の「方丈記」を買いました。定価540円。

新刊書のコーナーには「超訳 方丈記」という本があります。原文と現代語訳、それに

著者の解説文がセットになった本で、1500円ちょっとの値段。

もちろん、岩波文庫にしました。

なにしろ、文庫で本文は、わずか30ページの短いもので、

マクドナルドでカフェラテを飲みながら読み終えてしまいます。

本文にはかなを振ってあるし、下段にはていねいな校注がついているから、

現代語訳の必要はなく、よみやすい文章です。

現代語や超訳なるものがつくと、どうしても原文を読むのがおろそかになって、

超訳文だけ読んだりするもの。

文庫で30ページの「方丈記」、原文をマクドナルドで読むのがおすすめです。


鴨長明は方丈の草案に暮らしながら、悟りきれず、

汝姿は聖人(ひじり)にて、心は濁りに染(し)めり、と自戒するところ、

煩悩の人らしくて、親しみをを覚えます。