『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』

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4月13日の金曜日木嶋佳苗被告に死刑の判決があった。

3人の男性を殺害した容疑に対する裁判員裁判による判決だった。

ネットを利用した結婚詐欺と自殺に見せかけた連続殺人事件として、週刊誌が書き立てていた

事件。

週刊誌は男性目線で、「デブでブスのくせに、7人の男たちから結婚をエサにして1億円を超える

カネを詐取して、そのうちの3人を殺害した、平成の毒婦」として被疑者を罵倒し、扇情的に扱った。

ルポライターである北原みのりさんは、それらとは対照的に「これは女の事件だ」として

女性の目線で書いた、その100日間の裁判傍聴記である。

わくわく亭は本書の発売日に買って読んだ。



木嶋裁判の死刑判決があった4月13日から数日経った頃、たまたま朝日ニュースター

番組「ニュースの深層」で、北原さんがゲストで、この事件についての解説があり、「木嶋佳苗

裁判から見えた社会の断層」として語って、非常に興味深いものがあった。

たとえば、裁判の傍聴希望者には若い、木嶋被告と同世代の女性がたくさんいて、異例だったとか、

木嶋被告に同情する「佳苗ガールズ」まで出現したという。

彼女たちの中には、お金を持っている年長の男たちから、「性」を交換対象にしてお金を受け取る

ことに罪悪感はない、という世代に属する女性たちもいる。

いわば木嶋被告は、そうした彼女たち自身と、とても距離が近い存在なのだという。




彼女の裁判傍聴記が本になると知ったので、わくわく亭は、発売日に買った。

なるほど、男性目線の週刊誌記事とは異質の、女性目線でなければ書けない裁判記録だった。


本の紹介をする前に、テレビ「ニュースの深層」から一部を紹介しよう。


佳苗は婚活サイトに登録して、ヒットした相手を自分のブログに誘うのだが、登録第一日目に

50人の男たちが、彼女に関心を寄せた。

まるで、結婚に飢えている男たちばかりの池に、香苗被告が釣り糸を垂れたようなもので、

いくらでも釣り上げられた。

それほど、結婚願望がありながら結婚する相手女性にめぐまれない男たちがいるということなのだ。

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データは結婚適齢期における未婚率である。2010年現在、男性30~34歳で未婚は49.3%

と二人に一人が未婚。それは彼らの相手となる25~29歳の女性60%が未婚、つまり結婚しないから

で、生涯結婚しない、あるいは、したくてもできない未婚者は19,1%もいる。

その傾向は今後増加する。

理由はいろいろあるとしても、女性たちは結婚条件を高く設定するから、結婚紹介所や婚活サイト

にアクセスしても、相手にされない落ちこぼれる男性が増える一方という状況になっている。

そこに、普通の真剣に結婚を考えている男性と知りあいたい、という佳苗のブログに、経済力があり

ながら、中年なのに女性経験が乏しい、結婚願望者がひきつけられたのである。

佳苗に殺害されたとする3人のケースが分析される。

大出さん(41歳)のケース。知りあってすぐに450万円を渡している。

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寺田さん(53歳)のケース。

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寺田さんは半年で1850万円を佳苗に与えながら、性的関係もなく、別れ話をもちだされる。

それでもまるで、彼女を好きになることは宗教のようだと、溺れている。

二人とも、結納金と考えればいい、と言っていたらしい。

安藤さんのケースは高齢者の「性」と「孤独」の問題が内在している。

安藤さん(80歳)。

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安藤さんは80歳でも性的欲求があった。するとまわりは、いやらしい、とか、病気だとか

言って変人扱いされていた。そこへ佳苗は、高齢者でも性的能力があれば、おつきあいします、と

変人あつかいしないで対等な男女関係を提案したから、安藤さんは、佳苗を「愛した」。


どのケースにも現代社会が抱えている「断層」が浮き彫りになっている、と北原みのりさんは

分析するのだった。

これを見たら、彼女の裁判傍聴記が読みたくなるではないか。