芦﨑治『ネトゲ廃人』
新潮文庫の新刊で発行日は5月1日になっている。
買ったのは4月24日頃だったから、発売直後に買ったことになる。(発行日前に配本されることは
通常行われている)
新刊の文庫本のコーナーで、平積みの文庫のカバーを眺めていた。
すると、20代と30代と思われる男性2人が、つぎつぎと手にとって、売り場カウンターヘ
持って行った本があった。2人とも、発売を待機していた様子だった。
おや、どんな本なのだろう。
おかしなタイトルの文庫である。芦﨑治著『ネトゲ廃人』480円。
ネトゲとは何か?
ぱらぱらと内容を煮て、ネットゲームにはまって強度の依存症になり、廃人同様になった
ハードなゲーム愛好者についてのルポであると分かった。
わくわく亭も買った。
いまやゲーム狂躁時代である。ゲーム専用機やパソコンばかりではなく、ケータイでもゲームが
できるから、ゲームは家庭であれ、職場であれ、交通機関内であれ、学校の教室であれ、場所と時間
を選ばずにプレイできる時代となった。
わくわく亭にも、ゲームやネットの、いわゆるバーチャル依存症については多少の知識はあったが、
とんでもない。
読んでみて、深刻なネットゲーム依存症が蔓延していること、それはわくわく亭の想像を
はるかに超えた深刻な状態であることを学んだ。
筆者は全国の「ネトゲ廃人」たち20名ほどに、直接面談して、その病状、狂気、生活破壊など
影響の実情をルポして、これを政治が放置してはならないと警告している。
ネット先進国である韓国へも飛んで深刻な実情を報告する。
韓国の高一の女子高生は「ゲームにはまって、ご飯も食べないどころかトイレに行く時間も
惜しんで自分の部屋で大小便するようになるほど、ひどくなり」高三で退学。
パソコンから一瞬も離れられなくなるのは、ネットゲームの習性なのだ。
一人遊びのゲームではなくて、4~6人がチームをつくり、集団でゲームをするから、
一人が途中で抜けると、ゲーム上での闘いに残されたメンバーが負ける、あるいは死んでしまう。
「わたしが眠ると、みんな死んじゃうよ」という言葉の意味はそれである。
自分が必要とされていると感じるから、それを中断できない。
ゲームが開始されると、徹夜どころか、48時間以上も連続してしまうのは、ネットゲームの
チーム行動が原因なのだ。
チームの充実した連帯感、信頼感を体験するうちに、仲間の男女は恋愛感情を持つし、
リアル(現実)に逢って、初対面であっさりとラブホテルに直行したりするのは珍しくもない。
ネットの感覚がリアルの上位にあって、支配してしまう。
「ネットゲームをやっていると、リアルの友達がいらなくなる。だって画面上にいっぱいいますから
話をしていても本当に楽しい。わざわざお金をかけて外に出て友達に会うっていうことの意味が
なくなる」
夫婦がゲームにはまると、妻は食事の支度もしないで、どっさりレトルトを買っておいて、それで
すますし、子どももそんな食事になれてしまう。
あるいは、子どもがいるとゲームができないから、夫婦は子どもをつくらない。
「そのとき、夫を見て、おかしいなと何か危険な感じがしたんです。夫を冷静に見始めてから、
彼が病気のように見えるようになった。それで初めて、自分も病気なんだ、と考えるように
なった」
グリーやモバゲーなどはネットゲーム専門であるし、SNSはネートゲームを取り込んでいるから、
いよいよネットゲーム狂躁時代は、これからが本番なのだろう。
いえる。