復興特需

東北地方の景気がいい、と新聞が伝えている。

東日本大震災から10ヶ月。復旧、復興事業が集中する東北地方は「復興特需」に沸いている、という。

仙台の歓楽地国分町は、バブル景気以来の客足で、高級クラブには毎夜客があふれ、高価な酒が売れ、

帰りのタクシーがみつからないという。

客の多くは土木建設関係者らしい。なにしろ国、地方あわせて20兆円ほどの復興関連予算が、

今後数年間で執行されるのだから、「特需」はまちがいない。

低迷する株式市場でも、復興関連銘柄だけは堅調で、建設株は上昇する。

欧州金融危機の影響で低迷する銀行株のなかで、被災地の銀行株だけは元気になりつつある。

しかし、である。

被災地では仕事がない。あるのは月収が15~17万円ほどの低賃金労働ばかり。

では誰が仙台の国分町で「特需」を謳歌しているのだろうか。

日本全国から建設土木会社の社員、作業員が東北に集まっているが、かれらをたばねているのは、

大手ゼネコンである。復興事業の請負窓口は、またしても大手ゼネコンなのだ。

かれらが毎夜仙台の歓楽街に「関係者」たちと繰り出す図は、あの土地、建設バブルのころと

かわりがない。

家を、家族を、仕事を失って、まだ仮設住宅にいて、仕事をさがしている大勢の被災者の目には、

この歓楽街の特需景気の有様はどのように映るのだろう。

国民の税金である20兆円の復興資金は、ゼネコン―下請け土木建設会社―その社用族―歓楽街

へと落ちて行く。

特需の恩恵に浴すのは、首都圏に本社を置く大企業の資本ばかりで、

結局は利益は首都圏に取り込むのではないか。

バブルのドンチャン騒ぎを遠くから眺める被災地の住民の目を忘れてはいけない。

復興特需の恩恵に浴さない、特需から取り残されかねない被災者の存在を忘れてはいけない。