年賀状が書けない子どもたち

月刊誌「文芸春秋」新年特別号で「年賀状が書けない子どもたち」という太田あやさんの

「緊急レポート」を読んだ。筆者は『東大ノート』というベストセラーを書いたライターである。

『東大ノート』を書くことになった動機は、「うちの子どもはノートが書けない」という母親が

多いと知り、今の子どもたちに「書く力」がなくなってきているという事実に驚いて、その教育の

現場と現状を取材したのだそうだ。

○黒板に教師が書いたことを、ノートにきちんと書き写せない。

○ノートの罫線に合わせて文字を書くことができない。

○縦書きの原稿用紙の書き方がわからない。

などは普通らしい。

それでは手紙やハガキが書けないのは当たり前である。

○宛名の書き方がわからない。

○郵便番号にケータイ番号を書いてしまう子。

○自分の住所を知らない子。知っていてもかな文字でしか書けない。

○切手の意味を知らない。

などなど。


2009年、文科省が全国120万人の小学6年生を対象に調査をした。

出題はハガキの書き方で、

「自分の名前、住所、相手の名前、住所の4つをハガキの表に正しく配置してください」というもの。

正答率は67.1%だった。およそ40万の六年生がハガキの表書きができない。

これにショックを受けて手紙の書き方養育をすすめる学校が増えたそうだ。


小学生ばかりではない。大学を卒業するまで手紙、ハガキを書いたことがない学生も多い。

就活するため会社に履歴書を送ろうとして、封筒に宛名をどう書いていいかわからない。


教室で手紙の書き方を教えていて、分からない子に隣同士で教えてあげなさい、というと、

自分の住所がバレるからいやだという子がいる。

個人情報保護法ができてから、生徒名簿が公表されなくなった。

それで友達同士の住所がわからない。


これでは年賀状は送れない。

しかし子どもたちにはケータイがあり、メールがある。

元旦の午前零時に「あけおめ~」と書いたメールを友達に一斉送信する。


こうした情景はさんざんに聞いてきた。

どうすればいいか。

学校で教育することも必要だが、家庭で、両親が手紙、ハガキを書いている現場を子ども

たちに日頃から見せていくことが大切だろう。

机の上には年賀ハガキがあって、どこに名前を書き、住所を書き、郵便番号とは何か

両親が書きながら子どもに教えてやれば、わずか10分で習得するはずだ。

子どもにお祖父ちゃんや、おばあちゃん宛に書いて送らせればいいだろう。

ハガキが書けない子どもの両親は、ハガキを書いたことがあるのだろうか。

大人たちまでがメールで「あけおめ~」と一斉送信しているのであれば、

日本の文字文化は衰退の道をたどることになる。