「別荘橋のできごと」新聞評
『酩酊船』26集に寄稿した小説「別荘橋のできごと」が5月28日の神戸新聞の
同人誌評で取り上げられている。評者は作家の竹内和夫氏である。
『酩酊船』26集森岡久元「別荘橋のできごと」の(主人公)作田は72歳、ときどき昏倒して 一時的な記憶喪失にみまわれることがあった。 病院では高血圧症と診断されている。 今年の一月、友人と酒を飲んで東京・新橋で電車に乗ったところまでは記憶しているが、 タクシーで練馬へ帰宅したとき、どこかで転倒したらしく、頭部に怪我をして誰かに 手当てしてもらった痕があった。 そして3月、午後の散歩に出て、コンビニで蒸しパンを買おうとしたとき記憶が途絶えた…。 川べりの遊歩道のベンチに座っていると、正面の洋館から出てきた見知らぬ30代後半の 女が、頭の怪我の手当てをした模様を話し、また今夜にでもジンチョウゲの泡風呂に いれてあげるなどとなれなれしく話す。 白子川に桜を見に行き、花びらが吹き寄せられて流れる花筏を見ているうちに、 女と入浴してジンチョウゲの入浴剤を泡立てた生々しい情景が浮かび上がる。 昏倒する現実の戸惑いと、記憶喪失の隙間をうずめる艶やかな夢想とが混然一体となって、 老いの日常を軽やかに描いた秀作である。
さすが竹内氏の作品評です。みごとな内容のまとめ方です。
《秀作》はうれしい採点です。