無惨!池宮彰一郎
たしか3度目の映画化だった。
それも池宮彰一郎の原作である。
池宮さんは、本名の池上金男で時代劇映画の脚本を長年書いてきた。
そのバックボーンを資産として、歴史小説を書き始めたのだが、第一作が、
この「四十七人の刺客」(新潮社)で、一躍人気作家となった。
1992年だった。
69歳の新人ということで、本の帯文には「驚異の新人作品 登場!」
と華々しく紹介されたものだ。
読んでみると、評判通りの面白さだった。
守る側の吉良邸では、浅野浪士の討ち入りは必至と予測していたから、邸内を要塞に改造して
迎え撃つ準備をするなど、実に合理的な事件解釈をした迫力満点の攻防戦として書かれた。
池宮さんは次々と連載小説を書くことになったから、わくわく亭は単行本になったら買って
読むつもりでいたのだが、それらの本は書店で見かける前に、姿を消していった。
「島津奔る」(新潮社 1998年)
「遁げろ家康」(朝日新聞社 1999年)
あとになって知ったことだが、出版後に、内容や、文章に他の作家作品との「類似」が多く、
盗作だという批判がなされたのだ。
からの「盗用」だと指摘されている。
おそらく、にわかに人気作家となって、執筆依頼が殺到して多忙のあまり、池宮さんが尊敬していた
司馬作品を参考にしようと、コピーしたりメモしたりしていた資料文献を、自分の
なかに消化してしまう過程を抜かしてしまって、元の資料文献をほとんどナマの儘、自作に
書き込んでしまったのではあるまいか。75~76歳という池宮さんの高齢も影響しただろう。
とにかく、
「島津奔る」は2002年、「遁げろ家康」は2003年に絶版、回収された。
この事件は池宮彰一郎の作家生命を絶ったも同然で、池宮さんは2007年に失意のうちに
84歳で他界している。
との過剰な「類似」が指摘されている。
合理性があって面白く、これからも映像化されると思うのだが、
ならなかっただろうに。
無惨!池宮彰一郎。