土門拳の『風貌』(5)

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川端康成、52歳の写真。

撮影は1951年の5月。1966年にノーベル文学賞受賞。

そして1973年74歳で他界。自殺だった。

若い頃は「新感覚派」と呼ばれる切れ味の鋭い文体で知られたが、研ぎ澄ませた刃物

を思わせるような表情である。


土門拳は、川端が所蔵していた池大雅与謝蕪村の合作になる「十便十宜帖」の入手の裏話

を書いている。

終戦後、それを手に入れた時、川端は有り金全部を投げ出した上に、金目の物という物

は全部売り払って、ようやくものにしたのだそうである。

川端の奥さんが土門拳に、

「わたくしたちが結婚して以来、あの時ほど貧乏したことはございませんでした」

と語ったそうであるが、美術品一点を手に入れるためには全財産をつぎ込むという

その「崖から飛び降りる」ような意気地に感動したという。

やはり、「崖から飛び降りてまで」という感性がおもてに出ている写真だと思う。、