庄野潤三さん逝去
庄野潤三さんが亡くなられた。
88歳で、老衰のため死去と報じられている。
いかにも庄野さんにふさわしい死因だと思う。
家族との日常生活を描写、写生する「私小説」系の作家であったが、
「私小説」に多い作家の破滅的な私生活を素材にするような作品ではなくて、
平凡におだやかに過ぎてゆく日々を、意味深いものとして細部にわたって大切に
写生してゆく作風だった。
まだ学生だったわくわく亭は新しい文学の流れだと感じて、夢中になって読んでいた。
庄野潤三さんに面識はないが、わくわく亭が出版した著書を贈呈すると、
かならず丁寧な手書きの礼状をいただいた。
大家と呼ばれる作家が、贈られた本に礼状を書くことも、あまりないことだ。
さらに儀礼的な礼状というのではなく、内容も読んでいることが分かる文面になっている。
遊びに行って…」と少年時代の思い出を書いたりと、その大家ぶらない円満な人柄が
現れていた。
年賀状に返事ももらったこともあった。
すべて、くねくねとした特徴的な自筆だった。
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