『百年の誤読』(4)

第4章 1931~1940年


 『侍ニッポン』郡司次郎正

○『山羊の歌』中原中也

○『人生劇場』尾崎士郎



 『綴方教室』豊田正子

◎『墨東綺談』(墨は正しくは“シ”に“墨”)永井荷風

○『麦と兵隊』火野葦平


◎『雪国』川端康成


中原中也の詩集と太宰治の小説は、わくわく亭の学生時代の文学的バイブルだった。

中也の「汚れつちまつた悲しみに……」や「ホテルの屋根に降る雪は 過ぎしその手か、囁きか」とか

「私の上に降る雪は真綿のやうでありました」の詩句が臓腑に苦しくなるほどに染みこんだもの

でした。

宮本武蔵』は何度か読みかけては途中でなげてしまい、いまだに読み切っていません。

吉川英治の大時代な文体が、どうもつらくてかなわなくなるためでした。

前回に山田風太郎さんの言葉を引用したけれど、山田さんには申し訳ないが、わくわく亭は

吉川英治の文章は無声映画時代の弁士の解説みたいで、とても読めません。


『雪国』を高校2年のときに初めて読んで、純文学に目覚めた本で、わくわく亭が小説家に

なりたいと思ったのは、この本の感動がきっかけでした。

夫婦善哉』をはじめ織田作の小説はどんな短いもの、どんな通俗的なものまで、読みまくりました。

大阪にでると、織田作の小説ゆかりの場所をたずねて歩いたものでした。

『墨東綺談』の作者永井荷風に惚れ込んだのは30代以後で、いまもって愛読しています。


              (5)につづく