なぜメラミンを混入するか

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連日のように報道されている中国での乳製品へのメラミン混入事件であるが、

なぜメラミンを混入させるのだろうか?

タンパク質の濃度を上げるための詐欺的行為だと新聞は書いているが、ではなぜメラミンを混ぜると

タンパク質の含有値を大きく見せられるのだろうか。

そのあたりのことを新聞は知ってか知らずにか、説明していない。

疑問が残るのである。

仕方ない、わくわく亭が自分でしらべてみることにした。

すると、これは根の深い食品偽装事件であることがわかってきた。

日本にも重大な関係がありそうだ。

そんな折りも折り、大阪の丸大食品が中国工場で製造した食品3点の回収を発表した。

メラミン汚染の牛乳を使用したことが判明しためである。

中国で牛乳から有機化合物メラミンが検出された問題で、食品大手「丸大食品」(大阪府高槻市)は20日、中国の子会社が製造した総菜に該当メーカーの牛乳が使用されていたことを確認したと発表した。製品は全国で販売されており、同社は自主回収を始めた。これまでのところ健康被害は報告されていないという。

 自主回収するのはいずれもチルド食品の点心類で、「抹茶あずきミルクまん」(8個入り)▽「クリームパンダ」(6個入り)▽「グラタンクレープコーン」(7個入り)-の3商品。

 問題を受けて同社が調査したところ、中国山東省の子会社「青島丸魯大食品有限公司」が製造した一部の商品で、メラミン混入が確認された乳製品メーカー「伊利」の牛乳が原料に使われていたという。
(産経新聞

このニュースでも、なぜメラミン混入か、という視点が落ちている。

たくさんの日本の食品メーカーが中国に工場をもっている。丸大食品だけですむはずがないだろう。

工場は日系であろうと、原材料は現地で調達するのであるから、汚染原料を仕入れることは大いにありうる。

メラミン汚染は乳製品だけか?

いや、昨年発生したアメリカにおけるメラミン混入ペットフードによる大量のペット死亡事件、あれも
まったく同質の事件であり、乳製品ではなくて小麦グルテン(タンパク質)にメラミンが添加されたことが原因だった。

小麦グルテンとなると、ペットフードばかりか、人間の食品、たとえば製パン原料の強力粉などに混入の可能性だって考えられるではないか。

さあ、他人事ではなくなった。

こうなったらなぜメラミンか、どうでも詳しく知っておく必要がある。

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メラミンといえば、メラミン食器が知られている。テーブルトップなどに使用するメラミン化粧板(デコラ)がある。そうした製品になるメラミン樹脂の原料がメラミンである。

化学工場で尿素アンモニアから合成される無色の結晶体である。

尿素二酸化炭素アンモニアを反応させてつくる。尿素は窒素肥料の原料になる。

その炭素原料は石炭である。

ということで、肥料工場などではメラミンは容易に生成できる。

メラミンは化学的には有機窒素化合物として分類されるが、「有機」とは炭素のことで、炭素と窒素の
化合物なのだ。

窒素化合物であることが一つのポイントだ。

専門家によれば、食品が含有しているタンパク質の量を測定する際、窒素が使われるのだそうである。

窒素の量が多ければタンパク質が多いと判定されるらしい。

そこで安価で窒素を多量に含む物質メラミンを混ぜ込むことで、製品が高タンパクの優れた品質であるかのように偽装することが可能となるのである。

これに目をつけた悪知恵の持ち主たちが、安いメラミンを小麦グルテン(タンパク)のメーカーや
酪農家に売りつけているのである。

「この結晶を水に溶いて混ぜると、増量できるし、検査でタンパク質の含有量が大きく出て高品質の
評価が得られるという、一石二鳥の便利な原料」

と触れ込んで販売している。

いまでは「メラミン専門業者」がいるらしいのである。

なるほど、これで、なぜメラミンが混入されているのかが分かった。

ここまで読んで下さったかたには、つぎのニュースの意味がより詳細に理解できるはず。

【北京18日時事】中国で汚染粉ミルクによる乳児の腎結石が最初に判明した乳製品メーカー「三鹿集団」(河北省石家荘市)の事件で、同省の楊崇勇副省長は17日、水で薄めた牛乳に有害物質メラミンを混ぜてたんぱく質含有量を高める不正が2005年4月から行われていたことを明らかにした。18日付の中国紙・21世紀経済報道が伝えた。

 楊副省長は「不正の張本人は酪農家から牛乳を買い集めて、乳製品メーカーに売る業者。酪農家はむしろ被害者だ」と指摘。

逮捕された容疑者の供述によると、メラミンは水に少ししか溶けないが、牛乳の温度を上げて、クエン酸ナトリウムや油などを加えることによって、メラミンを大量に混入していたという。

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【北京19日時事】中国で粉ミルクに続いて牛乳から有害物質メラミンが検出された問題で、国家品質監督検査検疫総局は19日、緊急調査の詳しい結果を発表し、大手メーカーの蒙牛と伊利の製品の1割近くがメラミンに汚染されていたことを明らかにした。

 同総局によるサンプル検査で、蒙牛の製品は121回のうち11回、伊利の製品では81回のうち7回でメラミンが検出された。メラミン汚染が発覚した大手3社のうち、残る光明の製品で検出されたのは93回のうち6回だった。

今回の事件発端は「粉ミルク」だったわけで、わくわく亭はすぐに「森永ヒ素中毒事件」を思い出しましたよ。

今の若いママさんたちは、ほとんど知らないでしょうが、とんでもない食害事件でした。

日本中が大パニックになったのでした。

事件は1955年夏、森永乳業徳島工場で粉ミルクの製造工程にヒ素が混入し、西日本を中心に約1万3

000人の乳幼児が中毒を起こし、130人が死亡した。

被害者と加害者である森永乳業との長い裁判。監督官庁である厚生省の責任問題が強く問われた事件だっ

たが、今も多くが後遺症に苦しんでいる。

       
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メラミンそのものは、森永事件の原因となったヒ素のような毒性はないとされてきた。

しかし、メラミンが腎臓で結石を起こして腎臓障害で死亡するという最悪の事態になった。

それは2007年、アメリカで中国産の原料による犬や猫の大量死を招いたメラミン汚染ペットフード

とまったく同質の事件だった。死んだペットたちもまた結石による腎臓障害がその死亡原因だったのだから。

それが、今回は人的被害となった。

つぎのNET記事をご覧ください。これは今回の乳製品事件について書かれたものではなくて、

07年のペットフード事件について書かれた記事であるが、事件の内実、構造は全く同一である。

メラミン混入事件をあいまいに処理して、徹底した安全対策をとらなかったツケが、乳児被害を招いた

としか言いようがない。

中国ではタンパク含有量を多く見せかけるため、飼料用植物(等)タンパクへのメラミン添加は当たり前のように何年にもわたって行われてきた。
 
中国では今までメラミン添加についての規制が全くなかったため (つい先日禁止したばかり。4/26中国政府公表)、手っ取り早い利潤追求の手段とされたようだ。 

メラミンはいかようにも染められ、ごまかすのにも都合もよく、飼料製造業者などが競うようにメラミン屑(スクラップ)を広く買い集めるため、以前はただ同然だったメラミン屑の価格がここ数年間上昇していると話す業者までいる。
 
中には15年にわたり混入を続けてきた業者もおり、
中国の飼料生産現場では、
「メラミンは栄養にこそならないが、これといって害にもならない」という認識のようだ。

「メラミン混入飼料は中国国内に出回っているほか、一部は タイ、インドネシア、韓国、北朝鮮などのアジア諸国にも輸出されている」 という関係者の話もあり懸念される。

上の記事では、動物への飼料にまぜてメラミンを与えている実態をレポートしているが、

FDAの調査結果では、小麦グルテンに混入されたメラミンがペット大量死の原因と結論づけられている。

ただし、メラミン汚染が乳牛の飼料にまで蔓延している実態はおそるべしである。


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わくわく亭がしらべた関連事件のなかに、なぜ中国の酪農家や乳業メーカーが、近年そんなにも製品に含むタンパク質量を大きく見せたかったか、その遠因ともいえる事件がみつかった。

これも取り上げておくとしよう。

「偽粉ミルク」事件である。

2004年4月、中国安徽省阜陽市で少なくとも13人、また同省内の50~60人以上の幼児が、

偽粉ミルクを飲み栄養失調で死亡したという事件である。

さらに100~200人の幼児も栄養失調に陥ったが辛うじて命を取り留めたという。

偽粉ミルクの製造、販売の責任を負っていた47人の市の公務員が逮捕され、阜陽市の食料品店では

45種類もの他の偽商品が見つかった。

141の工場が偽粉ミルクの製造に関わった。

国が定めた基準ではタンパク質を10%含まなければならなかったが、

偽粉ミルクはわずか1~6%しか含んでいなかった。

政府は遺族に対する賠償と被害者家族の医療費を援助することを約束した、というのが事件のあらましである。

このような事件がおそらく中国全土で多発していたと思われる。

そこでタンパク質含有量の増量が注目されることになり、メラミン販売業者が「タンパク質水増し」

の解決策として酪農家に売りまくったのではあるまいか。


長くなったので(2)へつづく