築地川(3)「築地川春雨」
画題は「築地川春雨」です。昭和25年の作。
橋の名前がついていないから、清方が画いたのは築地川(つきじがわ)のどの橋なのか分からない。
雨で増水した川の流れを、見るともなしに見下ろしている、思いに耽る女の赤い傘。
傘を肩に傾げるほどの、やわらかな春の雨らしい。
女の雨コートの青と傘の赤い色が、女の白い顔をいっそう引き立てている。
傘の上には青柳と桜の枝が色香を添えている。
女には待ち人があるらしい。恋する男と、橋下にもやってある屋根船で、つもる話があるらしい。
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ああ、明治の女はいい。
そこで、わくわく亭がひねった一句。
春雨や 舟の障子も濡れぬほど