美少年(5)・信義のために

伊藤彦造が画いたのは、信義や忠義のために命をかけるストイックな美少年たちだった。

図鑑(3)に登場した「楠木正行(くすのき・まさつら)がそうでした。忠義のために決然と死地に赴く

ヒロイズムが官能的でさえあったのです。

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昭和4年『少年倶楽部』の「待て、父の仇」です。



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昭和25年『少年画報』の「阿修羅天狗(あしゅら・てんぐ)」より、主人公の伊織が新撰組と斬り合うシーンです。

「待て、父の仇」の少年剣士は、まだ甘い正義感に燃えた顔をしていますが、それから21年の星霜を経た下の「伊織」は、太平洋戦争から被った画家の苛烈な体験を反映したごとく、甘さは消えて、りりしい美丈夫に成長していますが、きびしく暗い表情に変わっています。