さだめ川(2)

 ちあきなおみは1978年に結婚し、92年には夫郷鍈治と死別した。それっきり、芸能活動を停止したまま今日に至る。
 彼女の夫への情の深さが思いやられる。
 そして、彼女の歌唱法がまた、情の深い歌い方なのだ。

 彼女の歌唱力を高く評価する人と、その歌への思い入れの深さを「くどい」「くさい」と敬遠する
人がいる。
 
 カラオケ愛好者で、ちあきのファンであれば、カラオケの収録曲にちあきの曲が驚くほど少ないのを
ご承知だろう。
 彼女の曲は歌うには難しいために、唄う人が少ないからだという。

 唄ってみれば、すぐわかる。
 どの曲も歌唱力がないと、もりあがりに欠けて、間抜けてきこえるのだ。

 あの「くどい」「くさい」と評された歌い方がものをいっていることが、唄ってみれば身をもって
証明される。
 それをこなす歌唱力が、船村徹の曲には必要だ。

 かるく唄える歌というより、耳を傾けて聞き入るという資質の歌だといえる。
 聞かせられる歌なのだと。

 彼女は一人芝居をしながら唄ったりしたが、演じる才能があって、それが芝居がかった歌い方
ともいえれば、ドラマチックな歌唱ともいえる。
 ドラマチックな歌唱を「くどい」「くさい」と感じているわけだ。

 実は「さだめ川」「矢切の渡し」「紅とんぼ」はドラマチックな歌である。
その特性を知らずに唄うから、間抜けて聞こえてしまうのだろう。

 だから、ちあきなおみ船村徹の曲は、唄うより聞くのが正解だ。

イメージ 1