風塵

 散歩の途中で、なにげなく振り返ると、後方の空が茶色だった。砂だ。風が来るぞ。

 せめて、あの先の木立の中までは、と急いだが、間に合わなかった。

 どっと襲ってきたつむじ風だ。

 関東ローム層の微粒子の砂塵をぶちまけやがった。

 息をとめて、両手で顔をまもる。身体が2メートルも横にはこばれる。

 風の神は「思い知ったか」と一喝して、高速道路に舞い上がり、またもや憤怒の

 勢いで舞い降りようと旋回中だ。

 にげろや、にげろ。春一番が来やがった。