片岡球子の面構え(1)

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 ここはわくわく亭ブログの『驚異の美術館』です。



 現代日本画壇において、この片岡球子(たまこ)さんの画業ほどの「驚異」は見当たりません。

 なかでも「面構」(つらがまえ)という人物画のシリーズは見る者に、熱い魂をもって、まるで

 歌舞伎の「見得を切る」のような迫力で迫って来るではありませんか。


 「驚異」は作品だけに限りません。


 ことし102歳になる画家が、いまだに現役の画家として新作に取り組んでいるという、

 その画業への情熱、執念は、90歳になって「ようやく絵のことが分かり始めた」と言った

 画狂人葛飾北斎に匹敵する「驚異」ではありませんか。


 北斎の名前をだしたので、一枚目は作品「葛飾北斎」(1976)を。

 球子さんの71歳の作で、日仏現代美術パリ展に出品したもの。

     
 これは、「面構」と銘打った作品ではないので、おだやかな肖像画です。

 それでも、龍を配した背景といい、大胆な色遣いといい、充分に片岡球子の特徴が

 出ています。

 龍は北斎の龍をモディファイしたものですが、そのウロコの描き方は球子さんの

 オリジナルで、なまめかしいもの。

 絵画にたいする執念が、この龍に化身したかのようではないですか。

 北斎の顔は、北斎の自画像からとっている。かなり美貌の老人ですね。



 いきなり、パリジャンたちに強烈な「面構」を見せて、初手から驚かすのを手控えた

 のかもしれません。