マック襲撃
村上春樹さんがまだ若いころ書いた作品に『パン屋再襲撃』という短編があります。
「僕」と結婚したばかりの「彼女」とが、深夜、耐え難い空腹を覚えたものだから、それだけの理由からパン屋を襲撃するという風変わりなお話。
襲うべきパン屋を物色するのだが、深夜のこととて営業中のパン屋がみつからない。パン屋のかわりに深夜営業しているマクドナルドの店を襲うことにする。
耐え難い空腹も理不尽なら、「僕」らの生活する世界の仕組みも理不尽だという、やわらかな抵抗感を描いた物語。
いま、高尚な文学の話をするつもりはないので、ただマック相手の「理不尽」な暴行事件があったものだから、話のマクラに村上作品の旧作を紹介しただけのことです。
産経新聞ニュースから引用します。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
10/19
「ポテトの量少ない」Y新聞販売店員、マック店員に暴行」
「ポテトの量が少ない」とクレームをつけて呼びつけたマクドナルドの店員に、暴行を加えた
として、埼玉県警羽生署は18日、傷害の疑いで、Y新聞販売店員、N容疑者(33)を
逮捕した。
調べでは、N容疑者は10月3日午後8時ごろ、自宅アパート玄関付近で、謝罪に訪れた
「マクドナルド羽生店」の27歳と47歳の店員2人に、「落とし前をどうつけるんだ」と
怒鳴り、胸を突くなどの暴行を加え、全治3日~1週間の軽傷を負わせた疑い。
(中略)
N容疑者は9月下旬頃から同店に、「メガマックのLセットを注文したが、ポテトの量が
少ない。コーラも氷の量が多くて、中身が少ない」または、
「なぜ家に謝りにこない」と数回にわたりクレームをつけていたという。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
わくわく亭が、こんな一見バカげて見える記事を、見過ごしにできなかったのは、いかにも現代の事件らしいからである。そして、村上春樹さんが提起している、現代の「理不尽」が姿を現しているからであります。
この事件から以下の4点に注目せられたい。
1.社会生活上のストレスから、年代を問わず、みんながキレやすくなった。
2.ストレスの吐け口として、他人にクレームをするクレーマーが大繁殖している。
3.事件の発端となった、マックのポテトの量は、いかに管理されているのか。
4.ポテトのトランス脂肪酸問題は解消されているか。
項目1,と2.は、わくわく亭がいまさらブログで論評するまでもない。多数のブロガーが、この問題を取りあげて、社会に警鐘を鳴らしているから、そちらにおまかせしよう。
さて、注目すべきは項目3.と4.とであります。
容疑者のNが、マックにいちゃもんをつけた「ポテトの量が少ない」という事実はあるのだろうか。
どうも、そうした事実はごく日常的にあるようですな。
Yahooの「知恵袋」をのぞいてみると、ポテトの量のバラツキ(すなわち理不尽)に気づいた人々の
生々しい声が聞こえてきました。なかには重要とおもわれる証言もある。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(マックでバイト経験者たちの証言)
○ 計量器はありますが、誰もつかわず、いれる人の感覚にまかされています。ポテトの
量が不均一になるのは、あたりまえです。
○ 店によっては、MサイズよりSサイズの方が量が多いってこともあり得ます。
(マックの顧客の意見)
○ テ-クアウトにすると、ポテトがしなってしまうから量が少なくみえることがある。
○ 友達と2人で行って、自分のは一回入れて終わり。友達のは一回入れてから、トントンと
紙容器の底を打って、もう一回入れた。あとでテーブルの上でポテトの本数を数えてみたら、
友達のが20本も多かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あきらかに容疑者Nがクレームをつけたがるようなポテト量の不均一という現実はあるようです。
これって、近頃やたらめったら使われている言葉「格差」じゃないですか。
いま、食品メーカーによる不正表示や偽装事件が多発しています。「白い恋人たち」「ミートコロッケ」「不二家」「赤福」「比内鶏」まど枚挙にいとまがないほど。
マクドナルドのポテトの量が計量されておらず、目分量でいれられているという事実が、いま容疑者Nの事件によって、皮肉にも、白日の下にさらされることになったのではありますまいか。
マックの「ポテト量の格差事件」として、こんごマスコミが大きく報道するのではないか。
(アホカって?)
それとも、これは、どうってことない事実なのかしら?
それにしても、容疑者Nがマック大好き人間であることは、彼の注文が「メガマックのLセット」だったことで分かる。
メガマックとはビッグマックのダブルサイズです。パテが4枚入って高カロリーバーガーである。
1個で750カロリーある。Lセットだから、ポテト、コーラもLサイズ。トータルで1500
カロリーを超えている。
これを、愛好する容疑者Nは、かなりのデブ、(この言葉は差別語かもしれないので、いいかえますと)そうとうの肥満体ではないか。(よけいな、お世話だったかも知れませんが)
過剰なカロリーばかりでなく、マックポテトには「トランス脂肪酸」が大量に含まれてるという記事が月刊誌『食品と暮らしの安全』のネット版に書かれていた。
白状しますと、実は、このわくわく亭はマクドナルド大好き人間でありました。
しかし、「それ以上体重が増えると、肥満体になりますよ」との妻の忠告によって、マックは2年ばかり「絶って」いるのです。
かわりに、日曜の散歩では、「モスバーガー」でマンガを読んでいるのですが、モス店では、ポテトは注文しないで、モスバーガーとブレンドコーヒーだけにしています。
コーヒーには砂糖は使いません。かわりにミルク(クリ-ム?)を2個もらうのです。
ところがです。
たったいま紹介した『食品と暮らしの安全』のマックポテトの「トランス脂肪酸」に注意を呼びかける記事のつづきに、看過できない文章があるではないですか。
「なお、コーヒーについてくるクリームは、マックもモスもトランス脂肪酸の多い植物性です。
使わないようにしましょう」
ええっ!!?
モスでは2個もらっていたが、1個にすべきか。いや、ブラックで飲むべきか。
大きな問題を、あらたに抱えてしまったではありませんか。
京橋のエクセルシオールではどうか。スターバックスではどうか。すべて、植物性だろうか?
すべてが矛盾にみちている。すべてが「理不尽」に思えてきました。
そうか、村上春樹の『パン屋再襲撃』は僕が考えていた以上に深い意味をもった作品だったのか。
(え?どうして、そうなるの?)
上掲の写真は、たびたび拝借していますが、『安野光雅の画集』(講談社 昭和53年発行)から
「おたまじゃくしはおたまのひまご」
「僕」と結婚したばかりの「彼女」とが、深夜、耐え難い空腹を覚えたものだから、それだけの理由からパン屋を襲撃するという風変わりなお話。
襲うべきパン屋を物色するのだが、深夜のこととて営業中のパン屋がみつからない。パン屋のかわりに深夜営業しているマクドナルドの店を襲うことにする。
耐え難い空腹も理不尽なら、「僕」らの生活する世界の仕組みも理不尽だという、やわらかな抵抗感を描いた物語。
いま、高尚な文学の話をするつもりはないので、ただマック相手の「理不尽」な暴行事件があったものだから、話のマクラに村上作品の旧作を紹介しただけのことです。
産経新聞ニュースから引用します。
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10/19
「ポテトの量少ない」Y新聞販売店員、マック店員に暴行」
「ポテトの量が少ない」とクレームをつけて呼びつけたマクドナルドの店員に、暴行を加えた
として、埼玉県警羽生署は18日、傷害の疑いで、Y新聞販売店員、N容疑者(33)を
逮捕した。
調べでは、N容疑者は10月3日午後8時ごろ、自宅アパート玄関付近で、謝罪に訪れた
「マクドナルド羽生店」の27歳と47歳の店員2人に、「落とし前をどうつけるんだ」と
怒鳴り、胸を突くなどの暴行を加え、全治3日~1週間の軽傷を負わせた疑い。
(中略)
N容疑者は9月下旬頃から同店に、「メガマックのLセットを注文したが、ポテトの量が
少ない。コーラも氷の量が多くて、中身が少ない」または、
「なぜ家に謝りにこない」と数回にわたりクレームをつけていたという。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
わくわく亭が、こんな一見バカげて見える記事を、見過ごしにできなかったのは、いかにも現代の事件らしいからである。そして、村上春樹さんが提起している、現代の「理不尽」が姿を現しているからであります。
この事件から以下の4点に注目せられたい。
1.社会生活上のストレスから、年代を問わず、みんながキレやすくなった。
2.ストレスの吐け口として、他人にクレームをするクレーマーが大繁殖している。
3.事件の発端となった、マックのポテトの量は、いかに管理されているのか。
4.ポテトのトランス脂肪酸問題は解消されているか。
項目1,と2.は、わくわく亭がいまさらブログで論評するまでもない。多数のブロガーが、この問題を取りあげて、社会に警鐘を鳴らしているから、そちらにおまかせしよう。
さて、注目すべきは項目3.と4.とであります。
容疑者のNが、マックにいちゃもんをつけた「ポテトの量が少ない」という事実はあるのだろうか。
どうも、そうした事実はごく日常的にあるようですな。
Yahooの「知恵袋」をのぞいてみると、ポテトの量のバラツキ(すなわち理不尽)に気づいた人々の
生々しい声が聞こえてきました。なかには重要とおもわれる証言もある。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(マックでバイト経験者たちの証言)
○ 計量器はありますが、誰もつかわず、いれる人の感覚にまかされています。ポテトの
量が不均一になるのは、あたりまえです。
○ 店によっては、MサイズよりSサイズの方が量が多いってこともあり得ます。
(マックの顧客の意見)
○ テ-クアウトにすると、ポテトがしなってしまうから量が少なくみえることがある。
○ 友達と2人で行って、自分のは一回入れて終わり。友達のは一回入れてから、トントンと
紙容器の底を打って、もう一回入れた。あとでテーブルの上でポテトの本数を数えてみたら、
友達のが20本も多かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あきらかに容疑者Nがクレームをつけたがるようなポテト量の不均一という現実はあるようです。
これって、近頃やたらめったら使われている言葉「格差」じゃないですか。
いま、食品メーカーによる不正表示や偽装事件が多発しています。「白い恋人たち」「ミートコロッケ」「不二家」「赤福」「比内鶏」まど枚挙にいとまがないほど。
マクドナルドのポテトの量が計量されておらず、目分量でいれられているという事実が、いま容疑者Nの事件によって、皮肉にも、白日の下にさらされることになったのではありますまいか。
マックの「ポテト量の格差事件」として、こんごマスコミが大きく報道するのではないか。
(アホカって?)
それとも、これは、どうってことない事実なのかしら?
それにしても、容疑者Nがマック大好き人間であることは、彼の注文が「メガマックのLセット」だったことで分かる。
メガマックとはビッグマックのダブルサイズです。パテが4枚入って高カロリーバーガーである。
1個で750カロリーある。Lセットだから、ポテト、コーラもLサイズ。トータルで1500
カロリーを超えている。
これを、愛好する容疑者Nは、かなりのデブ、(この言葉は差別語かもしれないので、いいかえますと)そうとうの肥満体ではないか。(よけいな、お世話だったかも知れませんが)
過剰なカロリーばかりでなく、マックポテトには「トランス脂肪酸」が大量に含まれてるという記事が月刊誌『食品と暮らしの安全』のネット版に書かれていた。
白状しますと、実は、このわくわく亭はマクドナルド大好き人間でありました。
しかし、「それ以上体重が増えると、肥満体になりますよ」との妻の忠告によって、マックは2年ばかり「絶って」いるのです。
かわりに、日曜の散歩では、「モスバーガー」でマンガを読んでいるのですが、モス店では、ポテトは注文しないで、モスバーガーとブレンドコーヒーだけにしています。
コーヒーには砂糖は使いません。かわりにミルク(クリ-ム?)を2個もらうのです。
ところがです。
たったいま紹介した『食品と暮らしの安全』のマックポテトの「トランス脂肪酸」に注意を呼びかける記事のつづきに、看過できない文章があるではないですか。
「なお、コーヒーについてくるクリームは、マックもモスもトランス脂肪酸の多い植物性です。
使わないようにしましょう」
ええっ!!?
モスでは2個もらっていたが、1個にすべきか。いや、ブラックで飲むべきか。
大きな問題を、あらたに抱えてしまったではありませんか。
京橋のエクセルシオールではどうか。スターバックスではどうか。すべて、植物性だろうか?
すべてが矛盾にみちている。すべてが「理不尽」に思えてきました。
そうか、村上春樹の『パン屋再襲撃』は僕が考えていた以上に深い意味をもった作品だったのか。
(え?どうして、そうなるの?)
上掲の写真は、たびたび拝借していますが、『安野光雅の画集』(講談社 昭和53年発行)から
「おたまじゃくしはおたまのひまご」