号外 「しんちゃんが辞めた」

イメージ 1

号外、号外!!
 安倍さんちの、しんちゃんが、「ぼく、もうやーめた」だって。

 しんちゃんはクラス委員長がもうイヤになっちゃった。
 まじめにやっても、生徒たちはしんちゃんをバカにするばかりで、意見に従おうとしない。
 ほかの委員たちは、失敗ばかりして、その責任がみんなしんちゃんにおしつけられる。

 しんちゃんはいいお家の子で、育ちがいいし、顔だって悪くない。背が高くて、見栄えもする。
 まじめに勉強して、そこそこ成績もあげたからクラス委員に立候補したら、委員長に選ばれちゃった。

 ママは喜んでくれて、
「しんちゃんは性格がよくて、純粋だから、ほかの悪擦れしたこどもたちとは違います。おじいちゃまみたいな立派な人になれるんだから。がんばって」といいました。

 ところが、クラスでイジメや喧嘩、学力格差など問題がいっぱいあって、それを担当する委員が
自分でイジメの当事者だったり、給食費の猫ばばがばれたりして、すぐ辞任しちゃう。
 そのたびにしんちゃんの責任が問われたから、もうイヤになっちゃった。

 辞めたい、といったらママが、
「おじいちゃまは、そんな意気地なしじゃなかったでしょ。がんばって」
とハッパをかけまくる。

 このままだと、まじめ純粋派のしんちゃんは「ウツ病」になりそうだった。

 しんちゃんの前任のクラス委員長は、じゅんちゃんといって、喧嘩が強くて、父親がロック歌手の子だった。彼にそれとなく相談したら、
「バカは相手にしなきゃいいんだ。クラスが騒がしくても、気がつかないふりして、鈍感にやれよ」
というだけ。

 とうとう、クラス担任の英語教師ジョージ先生に相談したら、
「しんちゃん、ぼくやめちゃうぞ、って脅かしてやれば、クラスのみんなは君を見直すよ」と助言。

 そこで、「みんな、このクラスを美しい教室にする、というぼくの目標に協力してくれないなら、
ぼく、委員長をやめちゃうよ」
 とママにも相談しないで、言ってしまった。ところが、
「やめればいいじゃん」「おまえ、もっと早くやめるべきだったんだよ」とだれも同情してくれない。

 涙目になって、しんちゃんは「ぼく、ほんとにやめちゃうぞ」
 ともう一回言ったら、
「おまえね、育ちがいいかもしれないけど、俺たちのことちーともわかってネーんだよ」
「自分が純粋でまっすぐだって思ってる奴って、自己陶酔型でさ、まわりのことはなんにもわからないんだ。ナルシストのナルちゃんだ」
「さっさと、やめろちまえ」の大合唱だ。

 ついに、しんちゃんはクラス委員長を辞任しました。

 お家に帰ると、きっとママにしかられるだろう。

 それをおもうと、純粋一途なしんちゃんのこころは、いまにも破れてしまいそうになります。

 かわいそうな、しんちゃん、クラス委員長なんかに立候補するんじゃなかったのでした。

 だいじょうぶだよ、しんちゃん、ママはしかったりするもんか。きっと、こんなふうに、慰めて
くれるから。

「しんちゃん、あなたは立派だったわよ。亡くなったおじいちゃまも、よく辛抱したって、きっとほめてくださるわ。打たれ弱いのは、あなたのせいじゃあないのよ。この世は、純粋でまっすぐな人には生きにくい所なの。帰ってきたら、ママガ抱きしめてあげますから、はやくお帰りなさい、この暖かいお家へ」
 

   わくわく亭の、ちょっと辛口の感想。
 
     「きみには、クラス委員長は100年早すぎた」