「別冊関学文芸」57号

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「別冊関学文芸」57号が発行になる。

わくわく亭は「花の昇菊・昇之助」というエッセイを発表。

これは56号に書いた「志賀直哉の影を追いかけて、尾道新地、道後松ヶ枝町、祇園新橋通」

の続編のようなものである。

尾道滞在中の志賀直哉の日記に、興味をひかれる2つの記述がある。

1.「圓(まどか)をきく」「圓に行く」と大正元年11月25日から29日まで5日連続して

  新開の劇場へ演芸を聴きに行っている。この圓とはだれのことか?

2.尾道義太夫の師匠のもとに通って、「壺坂」を習っている。なぜ尾道義太夫を?

  但し3回で止めてしまうのだが。


この2つの「謎」を解いたのが本作であります。

  「圓」は「橘ノ圓」という落語家であります。大正元年の11月から12月にかけての

  圓一門の姫路、徳島、広島における興行記録を発見したので、それに違いないと推理。

  志賀直哉の娘義太夫好きはよく知られていた。学習院の20歳の学生時代、当時15歳

  だった娘義太夫の豊竹昇之助に夢中になっていた。志賀の昇之助体験が作家になろうという

  動機だったと、後に72歳の作家がNHK番組で語っているほど強い影響を受けている。

  大正時代の雑誌『演芸倶楽部』に掲載された大人になった頃の昇之助のゴシップ記事を

  見つけたので、それを紹介しながら、志賀直哉の娘義太夫体験と京都祇園での舞妓遊びの

  体験が伏流水となって『暗夜行路』などの代表作の中に流れていることに注目した。