『昭和天皇実録』第十巻

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宮内庁編修の『昭和天皇実録』第十巻(東京書籍)を購入する。

第十巻は昭和21年から24年のでの昭和天皇の実録である。

およそ950ページの大部な書巻であるが、これで定価は1890円と廉価である。


わくわく亭は「天皇浜焼き鯛ー尾道少年の戦後絵日記からー 」という小説を書いているので、

昭和天皇の昭和22年12月尾道巡幸がどのように「実録」に記されているのか確認して

おきたくて、この巻を購入した。尾道行幸について、わずか8行記載があった。

それでも購入して満足だった。

天皇尾道駅前桟橋から船で向島の津部田というところへ向かわれたのだが、そこでどんな

行事があったのか、何をご覧になったのか、資料がなくて小説には何も書けなかった。この

『実録』であの空白を埋めることができたのである。


小説「天皇浜焼き鯛」のそのくだりは下記の通りである。

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 十二月八日、天気は晴れ。天皇お召し列車で三原から尾道駅へ到着。吉和町新浜の海外からの引き揚げ者や戦争被災者が暮らす応急住宅を視察されました。また千光寺公園から瀬戸内海の景色も展望されたとのこと。
 つぎに駅前桟橋から特別仕立ての船で向島の津(つ)部(ぶ)田(た)へ向かわれました。乗船なさろうとした時に、桟橋の周囲を取り巻いた群衆が、天皇の姿を一目見ようと規制線を越えて押し寄せたので、奉迎係をつとめていた市の学務課長は人波の圧力に抗しきれず、後ずさりして、思わず天皇のお尻にぶつかったということで、課長は大層恐縮したそうですが、天皇は気にもとめず、歓迎の波に満足の意を示されたといいます。
 ハプニングは続きました。船上で天皇が手をふれた柱が、ペンキの塗り立て状態でした。急ごしらえの特別船だったため、まだ塗装が完全に乾いてなかったのです。天皇の手がペンキだらけになったそうで、地元の新聞は、世が世であれば《切腹ものだった》と書いています。