チェルノブイリ事故の死者数は?

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堤未果の『政府は必ず嘘をつく』(角川SSC新書)

とても刺激的な本である。

堤未果さんの著作としては岩波新書の『貧困大国アメリカ』(Ⅰ)と(Ⅱ)について、このブログ

でも紹介した。

この新刊書はアメリカの9・11以後、いかに世界は変わったか、それは日本でも3・11以後

同様な変化が起きている。その危険性に警告を発した、実に刺激的な内容のルポである。

福島原発事故の後になって、われわれは「原子力村」という言葉をさんざん聞いた。

原発の安全性を地元民、国民に信じ込ませるために、政・官・財・学ばかりかマスコミまでが

一体になって「安全神話」を吹き込んできた。

それはアメリカが推進してきたグローバリズムの構造そのものだと解説する。

9・11以後アメリカは「愛国者法」を制定して、政・官・財・学ばかりかマスコミが一体化して

世論を一定方向へとリードしてしまっている。日本に「原子力村」があるように、アメリカには

愛国者村」があるのである。

そして「愛国者村」は経済的「グローバリズム」と絶対正義の「民主主義」をアメリカの世界制覇の新し

い武器として使用している。

その実例を、おどろくべき実例をつぎつぎに挙げていく。




WHOとかIAEAと聞くと、われわれは中立的な国際機関として信頼する。(そのように

理解するように、「原発安全神話」のようにたくみにすりこまれているのである)

IAEA福島原発を視察して、政府のストレステストの内容を検証し、適切だとレポート

したが、日本国民は「IAEAが検証してOKといったのだから、ストレステストは国際基準

に照らしても合格なのだろう」と考えやすい。

しかし、IAEAの任務は「原発推進放射線利用の促進、核拡散阻止のための3分野の査察」

なのである。憲章に定められた任務なのだ。

だから、ストレステストにOKを出すのは、原発推進機関としては当然の仕儀なのだ。

WHO(世界保健機関)はどうか。

WHOもまた原発に関しては推進機関なのだ。

われわれ日本人は福島原発事故のあとに、放射線医療の専門家に「チェルノブイリ事故では、

死者は数十人とか60数人出たが、福島ではゼロだった」といったたぐいの情報をいろいろ

与えられた。

事実はどうだったのか。

WHOとIAEA被爆被害を過小評価したデータを発表してきた。

それでも、数十人ではない。

事故後10年の1996年には「甲状腺がん以外の被害はほとんどない」と発表していたのが、

2005年には「チェルノブイリ原発事故死者数を4000人」と発表した。

さらにWHOは2006年4月になると「新しい数値として死者数を9000人に修正して」

いる。

これに驚いてはいけない。

ECR(欧州放射線リスク委員会)は「5000の論文と現場の医師・科学者・獣医・保健師などへの

取材をもとに100万人という死者数を割り出した」

このような数字は、日本政府も学者や専門家、マスコミまでどこからも発表されなかった。

「あのチェルノブイリ事故でさえ死者はほとんどいない」とテレビでも新聞でも国民に

報道していたではないか。


政府は昨年12月に福島原発事故収束宣言を出している。