浜矩子『中国経済あやうい本質』

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辛口のトークと渋い顔で人気がある経済学者浜矩子先生の新書本である。

中国経済があぶないとか、破綻はまちがいないとか、いや中国経済はますます成長するとか、

この手の中国経済本は、どこの書店に行っても、特設コーナーがあるほどに出版される。

中国経済について発表される各種の指標を、どちら側から眺めるかで正反対の予測になるらしい。


さて、ユーロ問題で「解決方法はほとんど無い」と、このお顔でつきはなしてしまう浜先生の

中国経済論なので、さぞかし辛辣な内容かと期待して読んだが、いや、とても大人の経済エッセイ

ともいうべき本で、一時間半ほどで楽しく読めた。

要するに中国経済は、貪欲に、傍若無人に、成長する思春期の「おとなになりきれない病」の状態

だという。対して日本は、「おとなになりたくない病」にとりつかれていると。

若い中国経済は、オリンピックだの万博だの、高速鉄道だのと、にぎやかな学園祭をやっている

経済だが、それは華麗な彩色したかきわりのようなもので、裏側がみえたらベニヤ板のざらついた

表面があらわになる。

《上海にはカラスがいない。(略)なぜなら、夜明け前に貧しき人々が全ての残飯を持ち去って

しまうからだそうである。この情報は、筆者にとって大いに刺激的だった》

人のカラス化が解決されなければ、「おとな」の経済にはなれない、という。

日本は「永遠の若者でいたがっている。失われた若さの夢」をとりもどしたがる。

それで、成長路線が捨てきれない。《だが永遠の若者は永遠におとなになれない、これほど

悲劇的なことはない》

中国はいつになったら「おとな」になるのか。

日本はいつになったら「おとなになりたくない病」から目覚めるのか。


中国経済 あやうい本質』
集英社新書
定価:700円+税