2011-08-27 168発の原爆 尾道ものがたり 福島第一原発事故が起きたときに、アメリカ政府は米国人に対して80キロ圏からの避難を 勧告した。 わくわく亭がすぐに連想したのは広島原爆のことだった。 広島に原爆が落とされたとき、4歳のわくわく亭は尾道にいた。 当時、そしてその後も、尾道に原爆による放射能の被害があったとはいわれなかった。 広島ー尾道間はおよそ70~80キロの距離がある。 つまり、アメリカ政府が福島原発事故後避難勧告をした80キロに近い。 福島ー東京の距離はおよそ200キロ。 そんな計算をしたりしていた。 原爆被害と原発被害は一緒には論じられないだろう。 原爆による被害者の圧倒的多数は、熱線、爆風、中性子線が原因だからで、福島原発事故 で心配されているのは放射性物質による健康被害だからだ。 しかし、広島でも放射能被害による「原爆症」患者は数十万という数にのぼった。 ところで、福島原発事故によって空気中に放出された放射性物質の推定量が 経産省原子力安全・保安院から発表された。 新聞に報じられたのは、セシウムとヨウ素の値だけだが、 その放出量の膨大さに圧倒される。 セシウム137は広島原爆の168・5倍だ。 つまり、セシウム137という放射性物質については、福島第一原発におよそ168発の 原爆が落とされたと同じ規模の被害が発生したのだ。 アメリカ政府が80キロ圏避難を勧告するはずではないか。 その世界史に例のない大量の放射性物質のただ中で、これからどうやって日本政府は 国民の生命、健康を守っていくのか。 広島の「原爆症」のように、「原発症」を出さない覚悟が国家になくてはなるまい。