ガルボの恋文

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NHKBSプレミアムで、たまたま「ガルボの恋文~坂東玉三郎 ストックホルム幻想~」という

ドキュメンタリーを見た。

23日夜の10時半ころで、CNNでノルーウエイのテロのニュース報道を見た後で、どこか国内の

チャンネルでも報道してないかと、チャンネルを変えていて、隣国スウェーデンの風景が映っていたので

手がとまったのが、この「ガルボの恋文~坂東玉三郎 ストックホルム幻想~」だった。

途中から見たのが残念なくらい上質なノンフィクションだった。(10時から11時半まで放送)

わくわく亭はガルボの名声は聞いていても映画は見ていない。

スウェーデン出身の女優ではイングリッド・バーグマンを映画館で見た世代だ。


ドキュメンタリーは新たに発見されたらしい17通のガルボの手紙を手がかりに、彼女の

ミステリアスな心の旅路を、ガルボファンである坂東玉三郎ストックホルムからニューヨーク

を訪ねながら繙いて行くという構成になっている。

手紙の相手はスウェーデンの出版会社の御曹司。

「恋文」といって間違いのない手紙をガルボアメリカから、まるで檻のなかに閉じ込められた

ようなハリウッドから、自由で美しい故国スウェーデンへ戻りたいと切々と訴える手紙を

彼に書き送っている。

ナレーションと手紙を読む玉三郎の声が、ガルボの心の嘆きを抑制的につたえて見事だった。

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ガルボは貧しい労働者階級の生まれで、13歳から父の仕事を手伝って理髪店の髭剃り係として働き、

15歳のとき父親が死んで、デパートの販売員として働く。そのころの極貧生活が彼女の

性格を作ってしまった、と玉三郎は語る。

どんなに華やかな女優としての成功や生活や、人気賞賛があろうと、こころの底には幸福を

信じられない少女時代から決定的な不信感があった。

ハリウッドで大勢の男たちに愛されたが、その不信感は溶けることがなかった。

彼女を女優として発見し、20歳のガルボをハリウッドへ連れてきた映画監督マウリッツ・スティッレル

はハリウッド式の映画制作に適合できずMGMから解雇されて、ガルボを残して帰国するが、

ガルボはハリウッドで信頼できる人をなくしてしまう。

スティッレルはガルボが23歳のとき、45歳でスウェーデンで死ぬ。

彼がガルボの愛人だとする説もあったようだが、「ガルボの恋文」の相手ではなかった。


そして36歳で映画から引退をするとマンハッタンに隠棲して、公の場へは姿を見せないで

生涯独身のまま、ひっそりと生きる。

「恋文」の相手であるが、17通目の手紙を最後に連絡は途絶えたようである。

そのラスト手紙を、番組の最後に、ふたたび玉三郎が、うつくしいストックホルム郊外の

ガルボの夏の家や、彼女が一人でボートをこいでいた湖の映像と、彼女のポートレート

をバックに「玉三郎節」で読んで聞かせるのだが、これがじーんときてたまらない。

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写真はガルボの墓石から。