「非存在の風景」18号

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尾道の詩人花本圭司さんから7月25日に発行された個人誌「非存在の風景」18号を

送っていただいた。

度々脳梗塞で入院しながらも、詩とエッセイの個人誌を継続して発行なさる情熱、熱意には

敬意を表します。

この号には、わくわく亭のエッセイ「花本さんとヒカルくん」がほぼ全文「酩酊船」25集

から転載されています。光栄なことです。


18号には3編の詩が載せてありますが、その中の「八月の自由」という作品を紹介します。

8月15日は終戦の日です。花本さんは昭和20年8月16日に感じた自由について書いています。


                               8月の自由

乗った汽車が

突然浮き上がった

このまま天へ昇るのか

僕が不安になっても

どんどん上に上がる

茶色い服を着た車掌が

込み合った車両を歩いてきた

僕は驚いて言った

「その服は国防服じゃないですか」

車掌は僕を睨んだだけだった

汽車が浮き上がった理由を

聞こうとしたのに

質問を間違えてたからかもしれない


ポケットの中の切符には

昭和20年の日付が付いていた

それでもいい

僕は夏休みになったのだから


8月16日は夏休みが始まった日であった

毎晩空襲警報に起こされて

防空壕に入って逃げ回る生活だった

地震じゃないのに土地は揺れた

それが疎開して空襲もなければ

敵機も見たこともない瀬戸内海で

生活を続けていて

突然戦争が終わった

8月16日は

夏休みが始まった日だった


僕は一人で汽車に乗った

何もすることはなかったから

僕は東京へ帰るつもりだった

中学2年の夏であった

何もしなくていいということは

大きな大きな自由であった

8月16日は

僕が自由を求めた

最初の日であった

汽車も自由を求めて

まい上がったのかもしれない

いたのかもしれない


最後の一行にはミスプリントがあったのかも知れません。