しがみつかない生き方

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いま書店でベストセラー第一位の新書本です。

最近の新書は読みやすくするために、活字は大きなポイントにし、ページ数も

少なくして編集してあるから、2時間もあれば読み終える。

10章から構成されており、各章のタイトルを見れば、読む前に内容はほぼ想像がつくのも

読みやすい印象を与える。それもまたベストセラーになる要因なのだろう。

第1章 恋愛にすべてを捧げない

第2章 自慢・自己PRをしない

第3章 すぐに白黒つけない

第6章 仕事に夢をもとめない

第7章 子どもにしがみつかない

第8章 お金にしがみつかない

第9章 生まれた意味を問わない

第10章 「勝間和代」を目指さない

といった具合で、著者が精神科医らしい、ごく常識的なカウンセリングになっている。

面白いのは第10章で、いまをときめく「勝ち組」の若き教祖である勝間和代さんに

かみついている。

がんばれば夢はかなう、向上心さえあればすべては変わる、という前向きなメッセージ

は著者の診療室を訪れてくる女性たちには役に立たないメッセージである。

勝間さんが「断る力」を持つようにと競争社会での「勝ち組」セミナーで述べる言葉は、

大多数の断ろうにも、その前に依頼そのものがない人々にとっては、無意味である、という。

ごもっとも。

なにしろ勝間さんは外資系投資会社で年収5000万円以上の成功者であるから、

「断る力」がなければ、睡眠時間もないという方だ。

第9章「生まれた意味を問わない」のなかで、精神分析学の新宮一成さんの夢の意味に関する

説を紹介しているのが面白い。

夢に手紙やノートが出てくるが、たいていそこに何が書かれているか読むことができない。

そういう夢は、《無意識が存在の秘密を自分に伝えようとしているものだ、と解釈される。

そしてその秘密が何なのかは、どうやっても自分の意識では読み解くことができないのだ。》

われわれは、自分は何者なのか、何のために生まれてきたのか、生まれた意味は何なのか、

と思春期から幾たびとなく考え悩むテーマであるが、

無意識だけは、その秘密を知っているということである。

ヨーガや禅で、座禅を組んで瞑想することで、無意識のそのまた奥の世界へと自己を解放

しようとするが、その方法もまた《秘密》への道なのだろう。